シーカヤックなどの樹脂製品を作るとき、一番最初は磨いた型にゲルコート樹脂という色のついたプラスチックを吹き付けます。これはかなりネバネバした樹脂で、時間と共に硬化が進み、触ってもベタつかない程度になるまでには数時間を要します。 山の中の工房です。仕事をしているといろんな生物に邪魔されます。なかでも、未硬化状態のゲルコートにくっつかれるともうアウト。蝶、蛾、トンボ、クモ、ハチ、アブ、ときには小鳥まで。でも、間違って入ってしまったような場合は、ほとんどが出ようとして窓に突進するので、窓や戸をあけて追い払えばそれで一件落着。 面倒なのが暗さを好むジャノメチョウやヒカゲチョウの仲間。なかでもこの時期に大発生するチャバネセセリ。そうです、こいつが樹脂作業の天敵です。チョウの仲間なのにズングリ胴体と茶色の小さいハネ。ひらひらと優雅に飛ぶ蝶のイメージとは大違い。昨日の呑み会でもみんなの反応は異口同音に「わっ、蛾が入ったァ」です。 捕虫網でもなかなか捕まえられないほどのスピードと、鋭角にターンしながら稲妻のように、まるで無目的に飛び回るこいつは、追うほどに暗い隅に入り込み自分でも羽ばたけなくなるのです
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うばゆり
アーティチョークって知ってますか。アメリカの大リーグ観戦などの際、ホットドッグやポップコーンと共に、茹でたアーティチョークが売られます。 日本ではあまり見かけませんが、大人も子供も大好きで、茹でたガクを一つずつむしって食べるのが大好きなようです。われわれ日本人が枝豆やゆでトーキビでも食べるようなもんでしょうか。 全く違うものではありますが、森の中のウバユリが、今、そのアーティチョークにそっくりな形になってます。(写真) でもこれは実ではなく花のつぼみなので食べられません。まるで南洋の食虫植物みたいに、濃い緑に血管のような赤い葉脈を這わせて、春真っ先にぼこぼこと地中から盛り上がり、やがて赤味を消しながらその中心に1本の花茎を垂直に立ち上げます。与えられた環境でその育ち方は大きな差がありますが、小さなもので30〜40センチ、育ちの良い株で60〜70センチの高さになると、その位置でしばらく垂直方向の伸びを休め、次々に大きな葉を出して笠のように広げます。初夏の森の中には、太い1本の足に支えられたちいさなテーブルがたくさん出現するのです。このとき、水平にひらく葉が重なることのないように3枚で1周
キツネのきもち
秀岳荘主催のカヌーキャンプで出掛けた洞爺湖で、今年も竹田津実さん(5/31記)に出会うチャンスが訪れた。まるで他人が見たら飼われてでもいるかのように、いつも工房に姿を見せるルルに付いて聞くことができる。 これまでも講演や呑み会の話題として出てくるキツネの話を興味を持って聞いてはいたが、今回は違う。身近に起きているヘンな現象、明らかに他の個体とは違うルルというキツネについての、具体的かつ詳細な疑問をたくさん用意しての酒の席。まず、同席した皆が反応したのが<ルル>という呼び名。先生はちょっと口の端で苦笑した程度に見えたが、他の者たちからは短絡的でひねりのない名前に大ブーイング。「何でルルなんだよ。そんなに「北の国から」のファンなのか?似合わねーッ!」「しょうがないだろ、最初にルルルル・・って呼んだら近づいてきたんだ。おまえならコーイコイコイとでもよぶのか?」 と、我ながら失点を認めた上での、勝ち目のない寂しい言い訳。しかし、竹田津先生さすがはキツネのオーソリティー。野生の状態では平均寿命5年程度というキタキツネを、これまでに数千頭も観察した揺るぎない実績を持って、「あんたはキツネか?」と言
ネギボウズ?
工房の正面の森の中に、笹やぶを切り開いた猫の額ほどの<秘密の畑>があります。 かろうじて木漏れ日が射すことはあっても、夏場は日中でも薄暗く、更にまわりから笹の葉が被さって、だれもこの場所を<誰かが楽しみに見守っている畑>とは思いもしないでしょう。 今この場所では、やがて昇華の時を迎えて種を撒き散らす前のネギボウズたちが、人知れず歓喜のダンスを踊っています。北海道人なら誰もが春の山菜のいちばんに挙げるギョウジャニンニクを、最適な環境でひっそりと育てています。いや、育てるというのは間違いでした。何も手を掛ける訳ではなく、ただ時々元気な様子を確認しながらほくそえんでいるだけです。 落ちた種が数年の内にうまく発芽しても2〜3年の間は1葉だけ、条件が良ければやがて2葉になり、さらに発芽から7〜8年を要してやっと花=ネギボウズを付けます。喰うために山から採ってきた中から、根っこの残った元気な株を土に差して5年。毎年少しずつ増えてくれて、ほんのちょっとですが楽しみにする気持ちも増やしてくれます。 でも、刈り取って食べるまでにはまだまだです。春恒例の<春旬鍋>には大量のギョウジャニンニクが
??何これ・・?
説明しても判りづらいと思いますが、EMセンサーという名の、電磁波で氷の厚さを測る器械が入るケースです。4M以上もある長いセンサーを中に入れ、砕氷船のクレーンで吊って空中から氷の厚みを調べるのですが、着氷や着雪による器械のトラブルを防止するための、器械をすっぽり覆うケースとして作りました。海氷研究をされている大学の先生からお話があり、国立極地研究所の依頼で構想をはじめたのが半年前。なにしろ参考にできる形や前例がありません。加えて電磁波に影響が出ないようにいっさいの金属を使用しないのが条件です。想像できる最悪な条件を考えてもなお「人間の想定は簡単に覆される」という事実のみが、遙かな高みから見下ろしています。「ニコニコしながら赤字だ赤字だって・・。ブヮッカじゃないの!ちゃんとお金にしないとダメでしょ!」「そんなに頑張って、からだ壊したらどうすんの!」ふふふふ・・。いいんです。ほかに無いものを作るときはいつもそうなんです。夜中に目が覚めたり、身体のあちこちに傷みが出たり・・。 いわゆる産みの苦しみってやつですかァ? 出産マニアとでも呼んで下さい。 何年かごとにこういう大変さを味わい、そしてそれ