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氷厚測定器

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ゆっくりですが確実に衰える身体を騙しながら、日々これあることを幸いにシーカヤックの製作を続けています。 そんな日常に国立極地研究所から変わり種の仕事の依頼が入ってきました。氷の厚さを計測するための測定器やレーザー距離計を衝撃や海水から守るケースの修理です。一般に使われるものでは無いので製品として製作している訳ではありませんが、南極や北極で使用するためこれまでに何台も作ってきました。 今回は南極観測船”しらせ”の備品と予備の2台が送られてきました。南極海でときには数メートルもの厚い氷を割って進む際に、マイクロ波を照射して氷の下の海水面と氷の表面との差から周囲の氷の厚みを算出するものです。昨年は時化で海況が悪く、4メートルの長さになる測定器本体と共に前後のアーム状の部分が破壊されてしまったようです。 電波に歪みが出ないようにするため強度のある金属のボルトなどは使えませんし、解体したらなるべくコンパクトに収まる形状であることなど、いくつかの条件をクリアしながら作ってゆくことになります。それでもカナダの砕氷船での調査では水没して機器のショートが起こるなど、意図しないトラブルも

山笑う、クマも笑う

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サクラは今年もゴールデンウィークを前にして葉桜に変わり、シラカバもカツラもイタヤカエデもみんな黄緑色の若葉を広げ始めました。クルミは枝の先端から雄花の房をたくさん垂らし、エゾノコリンゴの蕾も赤みを帯びてきました。山がモコモコ膨らみながら笑っています。 」 冬の厳しさと引き換えにずいぶん楽しませてくれたサクラですが、日高の沙流川添いでは今が盛りとエゾヤマザクラが青空に映えています。 今朝、工房の前の道路にクマさんの落し物。 真っ黒いコールタールのような宿便ではなく、柔らかいフキをはじめ新鮮な食べものが増えたとみえて1キロ以上はありそうなこの快便。ほんのり湯気があがっていました。 道路の真ん中で無防備に腰をかがめながら、気持ちよさそうにゆるんだ口元と虚ろな目の排便姿勢が何やら想像できます。    

今年も・・

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前述の雪はこの10日ほどですっかり消えて、工房そばの谷地には時を待ちかねていた水芭蕉が白い仏炎包をのぞかせています。 今年も冬籠から目覚めたヒグマがいつもの場所に姿を現しました。体の大きさから若いオスのようですが、足が濡れるのもいとわずに採餌に集中しています。 美味しそうなものがあるとは思えませんが、同じサトイモ科のミズバショウやザゼンソウの苦い根を食べて、長い冬に耐えた宿便を出すのだそうです。 人間の側の事情ですが、法改正があって今年から狩猟圧が高まることが予想されます。不用意に人間社会に近寄らず、孤高の獣としての生を全うして欲しいものです。

遅い春

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何度かドカ雪のあった札幌の街なかよりも降雪が少なかった南区ですが、3月に入ってから続いた低温の影響で遅い雪解けになっています。 市内中心部は数日前に積雪0cmとなりましたが、工房周辺ではまだ数十cmの積雪です。それでも日当たりの良い斜面やこの湿地では、黒々とした土の色が勢いを増し始めました。 この雪解け水の中から顔を出すミズバショウやザゼンソウを求めて、そろそろ冬籠りから目覚めたヒグマが見かけられる頃です。それに厳しい冬を生き抜いたエゾシカたちも、穏やかな陽射しを楽しむように水の中に立ち込みます。

ゾンメルシー

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捨てられない物、消え去って欲しく無い物のひとつに<ゾンメルシー>がある。 雪上移動のツールとして北欧などでは太古からあったらしいが、最大の特徴は滑走面全体に貼り付けられたアザラシ(英語=シール)の皮だ。後方へ向かって毛足を揃えることで、前には良く滑るが後ろには下がらない。この機能がそれまで足をうずめながら一歩ずつ歩いていたカンジキを用いた雪中行動から、大きな浮力の自由な登行と短時間の滑降が一気に得られるようになった。 ゾンメルシーはドイツ語で、英語で言えばサマースキー。滑るためだけの道具では無いし夏に限って使われる物でもないが、氷河を抱く欧州の山岳部で進化してきたものという。子供の頃、気象台勤務の父親がそのころロボットといった(現在のアメダス)、山上に設置された気象観測設備の自記紙やバッテリーの交換に冬でもこのゾンメルを履いて出かけていたものだ。 20年ほど前まで日本で唯一このゾンメルシーを製造販売する秀岳荘の依頼で、年間300台ほどオーストリア製の板にアザラシの皮を貼っていたことがある。北電をはじめとした全国の電力会社の送電線管理の人たちや、積雪地で活動する猟師、営