年別アーカイブ: 2015

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シリアルナンバー

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いつもの顔ぶれに、しばらくぶりの仲間、それに懐かし〜い人も交えて、真夏の積丹の海を漕ぎました。 出艇前の砂浜に並んだカラフルなカヤックの数々。ファルトの1艇を除いた全ての艇がノーライト、つまり私が作ったシーカヤックでした。 ごく最近作ったものは覚えているのですが、よほど印象に残るカラーリングは別として、情けないことに数年を経た艇は記憶も曖昧になってきます。こんな時はそれとなくカヤックの後ろ側に回り込み、小さく刻まれた文字を探します。 「ああ、こいつはもう13年も経つんだ。これを積層(製作)した時も暑かったよな。」 「ウオ! おまえは25年も前か。それだもの色だって褪せるはずだ。他にわるいところは無いか?」平成元年にある人に薦められて始めたシリアルナンバー。今ではルーターを使って数秒でおしまいですが、初めの頃は時間を掛けてテンプレートを鉄筆でなぞったものでした。 アルファベットと数字を並べただけの、とくべつ意味も無さそうな文字列ですが、たった10文字余りのその記号がたくさんの記憶を蘇らせてくれるのです。

生者必滅とは言うけれど

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親しくしてくれていた、秀岳荘の工場長が亡くなった。 69才。脳梗塞だそうだ。 創業家金井一族の末子として、高卒後は東京の山岳テント店に修行に入り、爾来半世紀に亘って山道具の変化と進歩に関わって来た人だった。 お互い得意分野は違ってももの作りの先輩であり、歳は上だが戦友のような関係でもあったような気がする。 四半世紀前から、こちらが作る犬ぞりに合わせたドッグバッグを縫ってもらったし、パタゴニア遠征用の特注テント、南極用ソリのカバーなど想い返すときりが無い。 20年前には「自分でも使えるしょ」と工業用ミシンもくれたし、つい先日もイベント用の筏に取付ける帆のようなものを縫製してくれたばかりだった。たいして金にもならない難題を持ち込む度に、ちょっとはにかんだような顔で「わかった。やっちゃる」と一言。そして約束には必ず間に合わせてくれた。 おせじにも接客が上手かったとは言えないし、おそらく金もうけにも疎かったに違いないが、秀岳荘という全国的にも稀な工場を併設した山岳用品店は、この人の存在を抜きにしては語れない。持ち込まれた30年以上も前のザックの金具の修理を、面倒くさそうに引き寄せて始めるとき、

ホオジロくん

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半月ほど前からのこと、ホオジロくんが一日に何度もこの車の周りにやってきます。 ホオジロさんではありません。メスの顔は全体が茶色っぽいので違います。これだけ黒と白のはっきりした顔はホオジロのオスなのです いくら整った顔立ちといっても、ここまでナルシストの小鳥は見たことがありません。バックミラーのこのステーがお気に入りで、自分の姿を鏡に映しては、ちょっと首をかしげたり伸び上がってみたり、背中を向けた体勢から顔だけフッと振り返ったり。まあ、窓の向こうででっかい人間が見つめていても素知らぬふり。 工房の窓ガラスやクルマのウインドに我が身を映すのも好きらしく、バードストライクのように突撃して失神するほどではないのですが、ガラスにクチバシやからだをぶつけながらしばらくホバリングを続けるのです。最初に見かけた時は、珍しい行動にしばらく釘付けにされましたが、毎日となるとそれほど気にもならず、また来てるな程度の反応しかありません。むしろこの立ち位置の下のボデーがウンコだらけで腹立たしい。追っ払ってやろうか。でも、彼にとって本来の場所である工房向かいの林の中に、時おり戻ってさえずる声の美しいこと。 ピッ

困った奴ら

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夏の脇役といえば、毎年ホトホト悩ませてくれるコイツらを挙げない訳にはいきません。 この、羽根が退化したイナゴのようなバッタの名前はミヤマフキバッタといい、同じ時期に似たような場所で大発生するサッポロフキバッタとよく似ています。ちょっと見ただけでは違いが判りにくいこのバッタたちですが、ウドの葉にたかるこの画像はどんな葉でも食べるミヤマフキバッタで、ほぼフキの葉しか食べないサッポロフキバッタではありません。しかし、迷惑な点で共通なのがそのジャンプ力。人間のサイズにしたら超高層ビルを跳び越えるほどの跳躍力で仕事の邪魔をしてくれます。目的の場所をめがけてではなく、着地のことなど考えずにとりあえず思い切り跳んでみるようで、樹脂作業や吹付け作業を一瞬で台無しにしてくれます。このバッタと同じ特攻隊員がセセリチョウです。なんといっても周辺の山肌に無尽蔵にある笹の葉が食草ですから、未来永劫食べたい放題。毎年7月の中旬から8月末にかけて大量に発生すると、意味も無く(もしかして理由でもあるのか?)稲妻波形で飛び回り、窓と言わず壁と言わず、もちろん作業中の樹脂の中といわず、みごとに玉砕してくれます。仕事を増

この夏の脇役は

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工房周辺に所嫌わず繁茂するエゾイラクサの葉に、無数の黒いヤツを見つけました。もともと葉や茎に細かなトゲがあって嫌われ者のイラクサです。旺盛な食欲で食い尽くされてもノープロブレム、むしろウエルカムなことでしょう。ただ、このクロちゃん、例年になく多すぎるのが気になります。図鑑で確認すると、やはりクジャクチョウの幼虫でした。 「蛾じゃないし、トゲだって毒があるわけじゃないから大丈夫。」とは言っても、哀しいかな人間はイメージと偏見の生き物。姿かたちが気に入らないばかりか、数まで多いとなると背中に悪寒を覚える人もいるようです。何かしらの自然条件の変異がもたらすものでしょうが、年ごとに多く発生する昆虫が違います。先週いっしょに呑んだ藻岩山麓に住むM氏は、「今年はハサミムシが異常に多い」と言っていましたが、このあたりではそれほどでもありません。 あと1ヶ月もすると、このクロちゃんたちがド派手なチョウに変身し、開け放った工房の中を日陰を求めて飛び回ることでしょう。 工房周辺のこの夏の主役と脇役は、ドロダンゴを持って飛び回るトックリバチと、このクジャクチョウ、どちらに決まるのでしょうか。