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前立腺を焼く

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10年以上前だが、大きな病院の人間ドックで前立腺がんの可能性が見つかり、更なる検査のためにと2泊3日の入院を勧められた。その時は疑いが晴れてそのままになっていたのだが、数年前にまた別の病院で疑惑が生じることに、、。 そしてエコーやX線を使った再度の検査でも結果は白で、癌ではないが前立腺が肥大しており、放置すれば頻尿になることはあっても薬で良くなることはないという。 男性は多かれ少なかれ老化によって膀胱が硬化収縮して排尿の間隔が近くなってくる。この症状を改善させるには今はレーザーで焼くという簡単な方法がある。この方法であればメスを使うこともなく1週間から長くても10日ほどで退院可能だとも。 このまま薬を飲み続けて進行を抑えるのも一方ではあるが、失禁ジジイになるのは嫌だし「この冬の間に手術しとくか」と思い立った。 ただ、そうは言っても10年前の体験が非常にインパクトのあるトラウマになっていて、手術室に入るまでどこかに躊躇する気持ちがあった。今回もその時と同じような全身麻酔をかけると聞いていたからだ。   10年経ってもはっきり覚えている。入院初日はい

50年前のクリスマスイヴ

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今から50年前のクリスマスイヴ、当時まだ10代だった我が妻と二人で、岩手県北上警察署の隣にある喫茶店の椅子に沈み込んだ。 他の客は奥の席で賑やかに意味不明の東北弁を喋る6〜7人の男女。店の入り口や窓際にはクリスマスらしい電飾が瞬く。自分のことをオラと明るく言う女の子達の笑い声の合間に男達の熱弁を聞いてみると、どうやら地元の4H倶楽部らしい。警察で「署を出たすぐ隣さつどいがあるからそこで待ってればいい」と言われたそのつどいの呼び名が納得できた。地元の若者達の社交場ということか。ちなみに吉幾三の<オラ東京さ行ぐだ>の歌詞につどいが出てくるのだが、確かこの頃にはまだ発売されていなかった。 何をオーダーして何を食べたのか全く記憶に無いが、しばらくして警官が事故証明を持って来てくれた。 そう、見知らぬ東北の夜の郊外で事故を起こしてしまったのだ。 若気の至りといえばそれまでだが、友達に借りた2トン車でひと儲けしようと本気で考えていた。伊豆でミカンを買い込み北海道で売り捌こうと、北へ向かったまでは順調だった。青森に着く頃には暴風雪でフェリーが欠航。当然そこで足止めとなる。荷台

温泉蒸し

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鹿部町に出来た道の駅を訪ねてみました。有名な<鹿部の間欠泉>の隣にできた新しい道の駅です。 10年くらい前にも見にきた間欠泉は、イエローストンのオールドフェイスフル等の規模を知る目には、なんとも可愛い噴出量と高さではありました。その記憶はけっこう鮮明に残っていたので今回は入場しなかったのですが、隣の道の駅に面白いものを見つけました。 駐車場の脇に<温泉蒸し処>の看板がついた四阿が建てられ、6基の釜の上に載せられた蒸籠(せいろ)からは勢いよく温泉蒸気が噴き出し、寒さのせいもあって奥まで湯気でよく見えないくらいです。蒸気やお湯で温泉卵を作って売っているところは何箇所もありますが、こうしたセルフで調理できる施設は道内では見当たりません。本州各地にはあちこちにあって、九州別府の温泉街の真ん中で海鮮蒸しの列に並んだこともありましたが、あまりの待ち時間にあきらめた記憶があります。 食材は隣の道の駅の売店で購入しますが、やけどの危険もあるので係の女性が念を入れて使い方をレクチャーしてくれます。 貝・魚・野菜・卵などを買うと、ネットに載せた食材と同時に革手袋と蒸し時間をセットす

帯広がいい、十勝が好き

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今から半世紀も前、初めて十勝平野を見たのは狩勝峠の上からだった。 当時、札幌から道東へ向かうには12号線を北上し、赤平、富良野と38号を進み、狩勝を超えて東進するのが一般的なルートで、日勝峠はまだ曲がりくねった狭い砂利道だったし、襟裳岬を回り込む黄金道路が完成を見るにはもっと時間が必要だった。 それほどキツくは無い峠道を富良野側から昇り詰めると、いきなり前方が崖となって切れ落ち、視界にはその果てを霞に消して十勝平野が広がっていた。雲間から差し込む太陽光線が平原のあちこちに光のスポットを落とし、映画で見た天地創造を連想させたのを、今でもはっきりと覚えている。 爾来、どれだけ十勝への道を走ってきたことか。10年ほど経つと日勝峠が主要なルートとなり、始めのうちは千歳から早来、穂別、日高を経由。やがて石勝樹海ロードが開通すると夕張から日高経由になり、道東道の開通によって、どちらの峠も経ることなく長いトンネルを抜ければそこが十勝というように変わった。 冬の晴天の強烈な冷え込み、太陽に焦がされる暑い夏。それでも時々現れる屏風のような防風林を後ろにしながらどこまでも真

一瞬の秋

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確かにひと月前までTシャツで間に合う夏でした。 バタバタと暮らしに追われながら雪虫の浮かぶのを見、道端で栗を拾い、山や峠の雪をニュースで見ているうちに、天気予報では来週あたりが雪マーク。ほとんどの木は葉を落として急に山が明るくなりました。北国の生活者にとって「夏と冬の間は秋」という漠然とした観念こそあるものの、冬に向かっていっきに駆け下るようなこの季節は、立ち止まってゆっくり季節を味わえるような優しい時間ではありません。 工房のまわりの全ての生き物はやがて来る冬に備えようと真剣です。親と別れたヒグマは、見つけたコクワの蔓によじ登って甘くなった実を食べ尽くす勢いです。交尾期を迎えた雄鹿は、たまらなく哀切な声を張り上げて雌にアピールしています。エゾリスは走り回り、カケスはうるさく鳴くのも忘れて貯食に余念がありません。 それにしても今年はカメムシの発生数が異常です。めずらしく昨年から2年連続で茶色いクサギカメムシが大発生。しかも去年の6倍という数が原因か、同じような場所で冬籠りする他のカメムシやテントウムシを今年はまったく見かけません。9月の末から冬眠場所を探して猛烈に飛び