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どろがめ先生の想い出

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雪の中に散らばる無数の黒い点・・。 畳んだダンボール箱を整理していた時のこと、パラパラパラと何百匹もの虫が落ちてきた。ダンボールの隙間に集団で冬眠していたカメムシたちだ。去年の夏に大発生したオオカメムシやスコットカメムシなど数種類が、ビッシリ躰を寄せ合って冬の寒さを凌いでいる最中だったようだ。 落下を免れて隙間に残っていたヤツらは、またそっと畳んで元の場所に戻してみた。雪の中のヤツらは仮死状態で動かないが、死んでいる訳ではないので指でつまむとあの強烈なニオイが漂う。雪を払い落として拾い集めたとしても、ふたたび春に目覚めるのは無理だろう。かわいそうだが大量虐殺の現場はそのまま手を着けずに保存する。   カメムシを見るたび想い出すのは今は亡きどろがめ先生だ。一度も教壇に立ったことのない東大名誉教授として有名な東大富良野演習林の高橋延清先生は、自ら<どろがめ>と称し、聞き手を引き込む独特の話術が得意なおじいさんだった。 20年以上も前になるが、ホタルに関するシンポジウムが道新ホールで開かれ、どろがめ先生に自由なテーマで講演を依頼した時のこと。畳敷きの楽屋で長机に寄りかかり、差し

別れたオンナは、、

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仕事に使っていたクルマを乗り換えることにした。 大きなトラブルも無く、二十数年間で30万キロ近く走ってきたランドクルーザー80だ。何度かの日本縦断に加え、北海道の隅々まで走り回っていつも一緒だった。 加齢による体力の低下は否定し難く、若い頃なら一人で何ごともなくルーフトップできたカヌーやタンデム艇を積みにくくなり、仕事場の外の柱にミニクレーンのようなホイストを設置して、まず吊り上げてからクルマに乗せるという二度手間が避けられなくなっていた。 ちょうど車検のタイミングでもあったし、いっそのことハイエースのバンにオーバースライダーというキャリアを取り付けてやればその方が簡単そうだし、最近増えてきた分割艇も個別に梱包したものを荷室に難なく積み込める。 こう決心してクルマを探す段になってハタと気付いたのが、これまで全く考えもしなかった自分自身の残り寿命だ。新車を買ったって20年も乗れるわけじゃない。免許返納を言われる80歳にもなってバンは無いだろう。カヤックを積んで長距離を走るような今の仕事が続けられるとして、とりあえず5年、上手くいったって10年か?よし、程度はソコソコの中古車を見つ

がんばれよ!

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元旦からもう半月が過ぎたが、降り続く雪に除雪の手を休めない。自宅と仕事場の両方で除雪機を動かさなかったのは二日もあったろうか。 昨日は腰上ほどの屋根の雪を、助っ人のHと一緒にほとんど下ろしたし、今日もやっぱりクルマの上の雪を下ろし、昼前まで工房周辺の除雪に掛かってしまった。 熱いコーヒーをすすりながらPCを開けてメールのチェックをしている時のこと、床下から微かな音と何かが動く気配。ネズミや鳥が立てる音にしてはやや大きめ。でもまあよくあること。数秒で関心は薄まり、コーヒーのカップを口に戻し、何とはなしに窓の外を見やる。 「・・・!ん?、何だ?」 床下から子ダヌキが這い出してきて道路の方にひょこひょこと歩いて行く。この時期に見慣れたタヌキはふかふかの冬毛でからだがまるく見えるくらいだが、この子は夏毛のように痩せている。疥癬にでも罹っているのだろうか。 あの動きならまだ間に合うだろうとカメラを掴んでおもてに出てみると、意外にワダチの雪道を100メートル近く進んでいた。この距離では写真にならないと諦めて見送る。何か声を出した訳ではないのにこちらの立ち姿を認めて立ち止まると、速足で逃げるどころか

コロナが教えてくれたコト

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目に見えない不気味なヤツに、この地球が覆われてもう2年。この間に、人類がこれまであまり意識せずに暮らしていたことを、コロナウィルスが問答無用にあぶり出してくれました。   例えば国境。 犯罪者でもない限り自由な往来ができていた各国の扉は、感染者数が増えるたび他国との協調なしにシャットダウン。素早い対応が肝心とはいうものの、日本人外国人双方で行くに行けない戻るに戻れない例が多く発生。その人たちの焦りやもどかしさは如何ばかりだったでしょう。 例えば各国のリーダーと政治体制。 わずかな感染者でも即座にロックダウンする国もあれば、死者数さえまったく無視してパンデミックを認めない国。他国に責任を認めさせることで失敗から目をそらせようとする国もあれば、情報を力で操作して朝飯まえのように真実を消してしまう国。 例えば経済格差と貧困問題。 途上国ではワクチン接種が行き渡ることなど夢のまた夢だというのに、経済力のある国は、金にまかせて2回分でも3回分でもワクチンを買いあさります。厚顔無恥とはこのことでしょう。他方、このところの新自由主義の台頭は、富める国の中でも、富める層を維持するために固定的な

耐えに耐えて

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自宅のすぐ近くに貸し切りバスの車庫というか、かなりの台数が青空駐車されるプールがあります。 そのうち道路沿いに並んで停められた10台ほどが、毎朝の通勤時に嫌でも目に入ってくるのです。ほんの一瞬ではありますが、「あァ、今日もずらっと停まってるな」と、仕事がなくて動かないバスたちを気の毒な想いで一瞥して通り過ぎます。 このバスたち、去年の春までは朝早くから出動していて、ここから見える景色はただ広い青空でした。主に中国や台湾の観光客を乗せて道内あちこちを走り回っていたのでしょう。コロナウィルスの影響は大きく、いきなりブッツリ途切れた外国人観光客は、このバスたちだけでなくホテルや土産物屋に、それまで想像もしなかった打撃を与えました。 去年のGo Toキャンペーンの時と同じように、先月の自粛解除のあとはそれでも歯が欠けたように数台が列を抜けて仕事に出かける様子もあったのです。 世界が落ち着きを取り戻したかのように思われた数週間前、今度はオミクロン株とやらが一旦開きかけた各国のドアを再び固く閉じさせてしまいました。 やはり通勤途中にある、外国人団体客が毎日バスで乗り付けていた焼肉と寿