30℃を超える真夏日は9日と、札幌としては猛暑日もなければ熱帯夜もない、かといって冷夏ということもない、ごく普通の夏が終わりにさし掛かっている。
そして今日。写真の氷厚測定器搭載用ソリを送り出して、私自身の夏も終わった。
前後端のレシーバーから送受する電磁波で氷の厚みを計る装置を載せたこのソリは、<しらせ>に積んで昭和基地まで運ばれる予定だ。
一昨年新しく造られた大型の二代目<しらせ>は、厚い氷に阻まれて、続けてこの2年とも昭和基地まで辿りつけないまま、燃料不足で無念の帰還を強いられた。南極海の最近の氷厚は、厚いところで10メートルを超え、しらせの砕氷能力や爆薬をもってしても前進が困難になるそうだ。この装置が、氷の厚みの薄い部分を見つけるのに、少しでも役に立ってくれれば幸いだ。
隊員やある程度の必要物資はヘリで運べるが、越冬用の大量の燃料や資材は、できるだけ基地のそばまで寄る必要がある。今の越冬隊は予備燃料で何とかしのいでいるようだが、今年もし補給が出来なければ危機的状況に陥るらしい。
昨年、北極用に作ったクレーン吊り下げ用の測定器カバーとこのソリを、今度は南極用に作ってくれとの話があったのは7月の半ば。
長年の金属疲労により、右肩の腱板が断裂して手術の必要を告げられた身としては、退院後も当分はリハビリが必要でまともな仕事ができないことを考えると、入院前に作り終えることができるか、しょうじき確信が持てなかった。
痛みを麻痺させるブロック注射を2週間ごとに患部に直接打ってもらい、カヤックの受注分を無事に消化し、悩みながらもなんとか終わらせて今日の発送にこぎつけられた。
この安堵感を喜びたい。
一度も海へは行かなかったけれど、山上の涼風にも触れていないけれど、今年の夏は良い夏だった。
明日から当分の間、手が使えなくなるのでこの欄は休みます。