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クズといえば

クズといえば・・。
大きく成長したそのイモからとれる上質できめの細かいデンプンは葛粉と呼ばれ、くず餅に代表される上品な和菓子材料として親しまれる。もち米の餅にはない、口に入れた時のあの優しい食感は、なぜか自分が少しだけ高貴になった気にさえしてくれる。
だが、50メートル四方を覆い尽くすほどに蔓延ったツルのおおもとを辿り、地中から数十キロもの塊を掘り出す苦労は、くず餅の柔らかさとはあまりに対照的で、それを想えば申し訳ない気持ちにすらさせられる。

クズといえば・・。
フーバーダムの名を聞いたことがあるだろうか?むかし学校で習ったはずだ。
かつてアメリカを襲った大恐慌に対処するために、当時のルーズベルト大統領がニューデイール政策の目玉事業として、グランドキャニオン下流のコロラド川をせき止めて作ったのがこの巨大なダムだ。
この巨大さはちょっと日本人には理解し難い。この一つのダムだけで、日本中に2500ある全てのダムの貯水量の2倍近いというから想像を超える。ここで生み出される電力は、不夜城ラスベガスは言うに及ばず、ネバダ州、アリゾナ州、そしてカリフォルニア州にまで送電されている。
そんな巨大ダムに厄介な問題が数十年前に持ち上がった。ダム工事で削られたノリ面の保護と緑化を兼ねて、日本から導入されたクズ(英語でもKudzu)がその元凶だ。
40年近く前に訪れたときにはまだ表立った問題にはされていなかったようだが、猛烈な勢いで繁茂して在来植物を駆逐し、地中に大きな根茎(イモ)を作って岩を持ち上げ崖を崩すという、予期せぬトラブルがその後に発生した。
夏場はみどり一色の葉に覆われてその下の蔓や地表を見ることはできないし、葉を落として蔓だけになった冬場には、まるで嵐の後に打ち上げられた漁網でも張り付いているかのようで、駆除を思い立つ者を失望に導く。

その後の様子は聞き及ばないが、この日本特産のモンスタープランツを、計画通りに駆逐できたのだろうか。

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