工房のすぐ近く、前回の画像と同じ湿地で今朝ヒグマを見かけました。工房に置いてあるカメラを持って、足音を立てないようにそっと引き返し、姿が確認できてからは腰を屈め、息を殺してジリジリと間合いを詰めます。
冬籠りから目覚めたばかりののこの時期、宿便を出して体調を整えるためにも、こういった水辺に多く生えるザゼンソウやミズバショウ、それにセリ科の植物の根などを掘り出して食する様子が見られます。
15メートル位まで近づきました。浅い水の中に立ち込み、鼻先も水中に突っ込んで何かを探しているようです。カエルかサンショウウオの卵でも見つけたのでしょうか。全身が黒っぽく、顔が明るい茶色で体長が1、8メートルほど。おそらく3才くらいのオスかと思われます。
顔を上げたらシャッターを切ろうとカメラを構えたとき、下からクルマのエンジン音が聞こえてきました。まだそのクルマが見える前にヒグマはさっと山側に身を隠します。
運転していたおばさんはヒグマに気付くどころか、カメラを持って道端でほふく状態のこちらの姿に仰天した様子で通り過ぎました。
こちらの存在には気付いていないはず。しばらくその位置を動かず、30メートルほど離れた山際からもとの場所に戻るのを待ちましたが、そこからは移動したくないようです。
満足な望遠レンズもなく、しかたなしに1枚だけシャッターを押しました。
脅かすつもりは全くなかったのですが、撮影をあきらめて立ち上がった私の視線を認めると、一気に笹薮を30メートルほど駆け上がって身を隠しました。ごめん、ごめん。
その1時間ほど後、工房に3人の測量屋さんがやってきて、このあたりで仕事をするのに「ヒグマが出るそうなのでハンターを帯同する」とのこと。
「ここはもともとヒグマが棲息する場所で、今いるヤツは若くて好奇心が強いから姿を見かけることがあるかもしれない。でも何もしなければ襲いかかることはないから大丈夫。決して撃ち殺したりしないように。」とは言っておきました。
身勝手な人間に見つかって災いが降り被さることなく、立派なカムイになれますように。