いよいよだ。もうじき始まる。
3月半ば。
うまくいって10日間。年によっては1日あるかないか。
何もじゃまするものの無い完全な自由。陽光と冷気のコラボレーション。
スノーシューなんていらない。ツボ足で何処へでも行ける。、
凍り付いた堅雪の表面はメタボなおっさんの体重でも破れない。
ほんとの地面より靴底が1メートルも高い。視線さえふわっと高くなる。
一面真っ白な草原の上を過ぎ、明るい森を突き抜け、沢水のせせらぐ音に足を向ける。
密生した笹薮も雪の布団がなだらかな斜面に変え、力を蓄えた春の光が覆う。
この堅雪の上を犬たちと一緒にずいぶん歩き回ったなあ、あの頃は。
シベリアの遠い記憶を体内に秘めた3頭のハスキー犬がいつも一緒だった。
底抜けの開放感に面食らい、やがて湧き上がる歓喜からまるで逃れるように、身をよじって走り回ったものだ。
犬たちがいなくなってからずいぶん経った。
今年の冬は暖冬だった。1月こそ降雪が続いたが、最低気温は−13℃どまり。
日が長くなり、小鳥たちが活発になり、根開きも始まった。
堅雪を何度か楽しんだら、さあ、今年の仕事のスタンバイだ。