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ピヨロコタンの滝

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日高山脈の懐深く、十勝川支流の札内川を遡った山の中にこの滝がある。
正式には(?)「ピョウタンの滝」と呼ばれ、この滝を中心にした周辺一帯がキャンプ場や公園として整備され、大勢のキャンパーで賑わう夏の一時期を除けば冷涼な空気と静寂を堪能することが出来る。
静かに散策路を歩くとき、この高低差10Mほどの小さな滝が悲しいドラマを秘めていることに気付く人は少ない。

今から60年前の昭和30年、周辺流域の開拓農家150軒余りの悲願を集め、赤貧の中から絞り出した資金を使って、ピヨロコタン(小さな砂地のコタン)と呼ばれたこの山奥にダムが完成する。ダムの少し下流に発電所も設えられ、開拓農民はそれまでのランプ生活から電灯の生活に移ることができた。
但し、念願の文化生活もつかの間に終わりを迎えることになる。翌年に発生した集中豪雨でダムは完全に土砂で埋まり、発電所も根こそぎ流されてしまったのだ。
再びランプを引っ張り出しながら悲嘆にくれる農民の様子は想像に難く無い。
ただの小さな落差工となってしまったダムから絶え間なく飛び散る飛沫とマイナスイオンに、かすかな怨念の影を感じるのは私だけだろうか。

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