寝返りを打った拍子に、半分は夢の中で 「うううっ、 いででぇ」
首を枕から起すと、筋を寝違えたようで 「エッ、 いっつゥゥ〜う」
起き上がろうとして、膝の痛みに思わず 「あうちっ、 う〜〜〜ん」
腰を伸ばそうとして、腰の痛みにまたしても 「いててててェェェ〜」
歩き始めて、小石を踏んだような痛風の痛みに 「うわっ、くっそォ」
ときどきは足首の靭帯も調子が悪くなって 「いった〜いナァ もう」
着替えようとすると傷んだ左肩の肩板が 「お〜うっ、 いてててぇ」
誰かに訴えるつもりは毛頭なく、そのとき感じた痛みが反射的に口から漏れただけだ。
朝から立て続けに「いててェ」を聞かされる家人は、ふた言めには「病院行きなよ。」
「もともと我慢強くて滅多に痛いとか言わないくせに、よっぽど痛いんでしょうよ。」
「そんなんじゃない。朝の動き始めはとくにあちこち痛くて口から漏れるだけだよ。」
「もう昔と違って歳なんだから、無理なんかできないんだよ。大事にしなくちゃァ。」
消費期限が近づいているとはいえ、いったい一日に何回痛みを口にしているのだろう。
而も他人に聞かれるかもしれないような状況で、無意識に洩らしてしまっているとは。
いけないいけない! 若い頃のように秘密の計画や夢を大声で洩らすようでなくちゃ。