阿部君は生徒会長になった。敵失攻撃と根回しとがうまくいき、以前に途中で放り出して辞めた生徒会長の座に返り咲くことが決まったとき、自分自身に誓いを立てた。
「今度は失敗しないぞ。やらなきゃいけない事は誰がやってもできる。そんな事は次の誰かがやればいい。僕はゼッタイ自分がやりたい事をやるんだ。
この町の番長をやっている隣の学校の小浜君。ちょっとウザい顔もされたけど、かれの後ろにくっついていりゃ何があっても大丈夫。気に入ってくれるんなら何でもするぞ。」
近ごろ向かいの大中中学や朝北中学の奴らの顔つきが気に入らない。
「やんのか?貴様ら。これまでみたいに絶対手出ししないなんて思うなよ!武器だって持ってんだ。小浜君がやるときゃマジ一緒にやってやるからな。なめんなよ!」
でも、この学校には校則がある。学校に危ないものを持ち込んではいけません。人に言えないような隠し事をしてはいけません。どんな時にも暴力を使ってはいけません。いじめや喧嘩が起きても話し合いで解決しなければなりません・・・。
「うっせーよ。ガキじゃあるまいし、やられる前にやっつけなきゃ意味ないじゃん。」
しかし、校則を変えるには全校集会を開かなければならない。
「いやいやそんな面倒な事しなくても生徒会だけで決めちまうさ。反対する役員なんかいないんだから。ガチャガチャうるさい外野の奴らも、決めてしまえばそのうち黙る。そうやって強く見せることがこの学校のためなんだ。
もう、おぼっちゃまくんなんて呼ばせない。僕の事を意気地なしだなんて絶対に言わせないからな!」
そう、彼はちょっとヤバくなった。でも、まわりがこれまでとは違った目で、この学校や彼を見るようになったことを認めようとはしない。