寒さの底を通り過ぎ、光の春が始まりました。
息を吸い込むと鼻腔がくっつくような寒さや、雪かきの重労働にもにも慣れたこの頃ですが、知らないうちにずいぶん日が長くなったことにふと気付いて、「ああ、春めいてきたなァ」と多くの人が顔を上げて呟きます。
積雪深が最高になるこの時期なので、目の前の山野は胸ほどの深さの雪に覆われていますが、これからはいくら降り添えたとしても、間違いなく減っていくことを北国の生活者は知っています。
三寒四温と言うように西高東低の気圧配置は間遠になり、春の陽光に満たされることが多くなるこの季節です。夏場は鬱蒼として暗い一帯の山林や原野の地表は、降り注ぐ太陽の光に照らされて一年中でいちばん明るくなるのです。木々の梢をすり抜けて、空の青さを惜しげもなく雪面まで届ける太陽の光と熱は、その下に眠る全ての生き物にやさしく春を語りかけます。
気のせいだけではないでしょう。この近辺で冬を越したキタキツネたちの動きも軽快になり、来月の発情期を控えてペアリング行動も活発さを増しているようです。