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秋の音

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ルルにあまえる子ギツネのすがたを最後に見かけたのは先月のことでした。
深まる秋の午後、山に沈もうとする太陽の柔らかい暖かさの中で、この後に訪れるせつない別離の予感はあったのでしょうか。
毎年のことながら、闇夜の山中に響く子ギツネの血の混じった泣き声は、聞く者の心に傷みや哀しみを共鳴させます。
『心を鬼にして』とはよく言いますが、親ギツネだって闇の中でさらに身を縮めるようにして、耳に纏わりつくようなこの叫びに耐えているに違いないのです。

山を覆っていた幾千億の木の葉たちが、いさぎよく梢を離れて土に還り、空の明るさが山肌にまで届くようになりました。木々の間の乾いた空気は、枯葉を踏むエゾリスの足音や、アカゲラのドラミングを、夏よりはずっと澄んだ音で耳の奥まで伝えてくれます。

ピーーーーーユゥーー!と、突然の大きな牡鹿の声。ハッとするほど近くに聞こえました。
透明感のある秋の冷えた大気とその空間には、他の季節にはない小さな楽しみもあるのです。

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