工房周辺の森は、「いつ来てもいいよ」と言わんばかりに冬を迎える準備を整え、今年のフィナーレとしての黄葉が真っ盛りです。
田中角栄の唱えた列島改造ブームの頃に耕作を放棄された畑は、まもなく原野に姿を変え、やがて手が付けられないほど混み合った森になってしまいました。わずか40年程の間に、クルミやナラの実をリスやネズミが運び、サクラやサンナシの種を鳥たちが運び、シラカバやイタヤの種を風が運んで、今では飽和状態と言えるほど自然度の高いうっそうとした林になってしまいました。
ここまで混み合ってくると、太陽に焦れてみんなが背伸びをし、梢のあたりで枝葉を拡げるので、背を高く伸ばせない木々は大きく育つことができません。夏場は薄暗くあまり色彩の無いこの森も、今が一年でいちばん明るい色に溢れています。
もう少しすると全ての葉が枝を離れて土に還り、光が主役の冬に移りますが、芽吹きの始まる春までのあいだ、明るいけれど墨絵のような無彩色の森に変わります。