日本海とオホーツク海の2つの低気圧が発達しながら合体し、965hPaと大型台風並みの暴風雪で、遠慮がちに近づいていた春におもいきり蹴りを入れて遠ざかって行った。
全道各地で暴れ回った強風は、低温の為に結着力を持てない雪を吹き飛ばしてあらゆる窪みを埋め、白い壁のように襲いかかって9人の命を奪い去った。
TVのワイドショーでコメンテーターが物知り顔で言っていた。
「まず警報が出ているような時に外出してはいけません。もし立往生したらエンジンを止め、時々車外に出て埋まらないようにスコップなどで隙間を作りましょう。」
殴ってやりたいくらい実態を知らない奴だ。
北海道ではひと冬に数十回も暴風雪警報や注意報が発令される。その度に家に籠もっていたら生活ができない。停めたクルマの中でエンジンを切ると15分で車内が氷点下になる。ましてホワイトアウトの車外に2〜3分出ただけで全身雪の塊り、鼻や耳の穴さえも雪が詰まってしまう。そんな状態で車内に戻ったらどうなるか・・。
こんなところに停まっていると大きな車に追突されるかも知れない。ハザードランプの点滅は見えるだろうか。いや、こんなにすっぽり埋まったら除雪車にクルマごと押し付けられるかも知れない。どうか誰かが見つけてくれますように・・。
今回犠牲になった方は、みんなその日常に於いて亡くなってしまった。毎日通いなれた道路で、いつもと同じ時間に子供を迎えにいって、あとちょっとで家なのに、すこし歩けば知人宅なのに・・。
強いてその結果の端緒を探すと、日常そのもののちからが弱くなっているのかも知れない。最近ではほぼ全てのクルマが四駆になり、埋まるようなこともないからロープもスコップも積まなくなった。ふだんは除雪も行き届いていて夏道と変わらず走れるようになった。困ったとしてもとりあえずケータイで助けを呼ぶ(呼んでも来れないが)ことはできる。
いろいろな便利さや快適な環境が、少〜しだけ私達の緊張感を薄めてしまったのかも知れない。
白魔は過ぎ去り、いつもの青空が梢の雪をより白く輝かせている。