久しく姿を現さなかったルルが元気な顔を見せてくれた。
いや、正確には姿を見せなかった訳ではない。朝、工房に来るといつも、行動パターンや歩様でそれと判るルルの足跡が、そこいらへんの雪上に残されていた。
だから来ていなかったのではなく、たまたまお互いの時間が合わなくて見掛けなかっただけなのだが、それでもひと月以上も姿を確認できないと、目明きの哀しさ少しずつ不安と不信が芽生えてくる。
夏場の姿とは別個体かと思われるほど暖かそうなキツネ色の冬毛に変わり、おもわず手を伸ばして触りたくなる。
ルルにとっては二度目の冬だが、この1年の間に出産から育児そして子別れと、濃密な時間が通り過ぎて行ったのだ。去年の今頃のあどけない少女っぽさは消え、オトナの雌としての自信を湛えた眼差しを、静かな正月の朝に残していった。