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冬のにおい

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前夜から降り続く雨が、朝には上空に侵入してきた寒気に冷やされて氷雨になってきた。
久しぶりにルルが姿を現し、いつもの場所に腰を下ろすと、その氷雨に打たれながら何かを嗅ぎ取ろうとしていた。
濡れた空気に何の匂いが漂うというのか、目を細め、突き出した鼻を西から北へ北から西へゆっくり動かす。
その様子を窓越しに見ていて気がついた。これは獲物や敵のにおいじゃない。すぐそこまで来ている冬を確かめようとしているんだと。

ずっと疑問に思っていた。
人間は、過去の記憶や暦、それに降り注ぐ情報の助けがあって<冬>の姿や位置を知るが、自然界の生き物たちに<冬>という概念があるのだろうか?
<今>を生き抜くことが全ての野生生物にとって、刷り込まれた遺伝子が、厳しい冬をやりすごさせてくれる唯一の味方なのか?

春や秋はともかく、野生動物にも<冬>の観念はあるのだと思いたい。ルルのその表情は、冬の存在を見つけ確かめ、そして納得しようとしていた。

レンズを向けていたほんの5分ほどの間に、氷雨は大粒のみぞれに変わり、やがてほんものの雪になって夜まで降り続き、昨日の朝にルルが佇んでいたこの場所は、今朝は20センチの雪に埋もれてしまった。

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