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製造責任

振り返ると、道具として発展途上ではあったが新しい可能性があったこと、当時は国産の製品が無く、いくつかの輸入品は高価であったことなどがスノーシューを作り始める動機といえば動機だった。はじめは製品として販売することなど考えず、興味のある周囲の者に提供するうち、意外な高評価と製品化の勧めに何となくその気になってしまった。このあたりが日曜大工オヤジの腰の軽さで、素材や加工法の乏しい知識に苦労しながら、1996年に3タイプを製品として発売することになる。

以来20年弱、こちらが予期しないユーザーの使い方や素材のミスマッチを克服しながらマイナーチェンジを繰り返し、8タイプに増えた時点で製作中止を決断することになる。その間にスノーシューは広く認知されることになり、それに比してハイスペックなエンドモデルから中国製の安価なエントリーモデルまで出回るようになると、もう少量手作り製品の出る幕ではない。

もともと材料代や労賃を無視して苦労を楽しんできたスノーシューの製作を止めてしまうことに何も未練はないのだが、これからも続けていかなくてはならないのは修理の問題だ。今まではフィードバックにもなるのでほぼ無料で対応してきたが、だんだんパーツの欠品も生じて修理不能のケースも予想される。しかし修理を依頼されるユーザーの多くは、山岳救助隊、環境調査、林業や登山など仕事に必要なものだ。画像の修理品は四半世紀前のタイプで元のフレームカラーさえ判らない測量屋さんのもの。

生産中止から10年を超えても可能な限り修理し続ける覚悟ではいるのだが、自分が過去に作った製品からフェードアウトできる日は来るのだろうか。

 

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