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前立腺を焼く

10年以上前だが、大きな病院の人間ドックで前立腺がんの可能性が見つかり、更なる検査のためにと2泊3日の入院を勧められた。その時は疑いが晴れてそのままになっていたのだが、数年前にまた別の病院で疑惑が生じることに、、。 そしてエコーやX線を使った再度の検査でも結果は白で、癌ではないが前立腺が肥大しており、放置すれば頻尿になることはあっても薬で良くなることはないという。

男性は多かれ少なかれ老化によって膀胱が硬化収縮して排尿の間隔が近くなってくる。この症状を改善させるには今はレーザーで焼くという簡単な方法がある。この方法であればメスを使うこともなく1週間から長くても10日ほどで退院可能だとも。

このまま薬を飲み続けて進行を抑えるのも一方ではあるが、失禁ジジイになるのは嫌だし「この冬の間に手術しとくか」と思い立った。

ただ、そうは言っても10年前の体験が非常にインパクトのあるトラウマになっていて、手術室に入るまでどこかに躊躇する気持ちがあった。今回もその時と同じような全身麻酔をかけると聞いていたからだ。

 

10年経ってもはっきり覚えている。入院初日はいろんな検査だけだったが、手術日が地獄だった。朝飯を抜いて待っていると、若くて元気な看護婦がステンのバットに浣腸器をのせて大きな声で呼びに来た。『ひっろなかさ〜ん、私と一緒に浣腸ルームにいきましょ!』。4人部屋の他のオッサンたちも唖然。6畳ほどの殺風景な部屋に便器と流しが1台ずつ。下剤をお湯で薄めたおぞましいほど太い浣腸を躊躇うこともなく、前屈みになった下着をつけていないオヤジの肛門にブスリ! 思わず「あ〜」と声にならない声が漏れ出す。小娘はそれを無視して「良しっていうまで出したらだめだよ!」

誰に対してか自分でもよく判らないが、「すまない」気持ちとともにブババババツという音が部屋中に響き、同時にこれまでの人生を支えてきた自尊心や誇りを全て吹き飛ばしてしまった。

次いで汚れたケツを拭いてもらい手術室に移動。下着を着けずに俎板の上に乗ったら、麻酔医が思い切り背中を丸めてネコのポーズをしろという。脊椎のどこかに注射された後は病室のベッドで目覚めるまで夢の中。

 

今回麻酔を担当してくれる女医さんに事前説明の際にそのことを話すと、今では浣腸をかけるようなことはありませんと言う。昔はうつ伏せの肛門から器具を入れて鶏の砂肝のような前立腺に直腸越しに太い針を突き刺し、注射針の中に残ったイトミミズのようなサンプルを平均13本とって調べたらしい。今では通常はそんな方法も取らないし、今回は目的も違うので仰向けに寝てもらうとのこと。(うっ、う〜ん、それはそれで・・)

レーザー治療は説明で聞いていた通り、尿道から細いカテーテルを挿入し、肥大したせいで尿の通りが悪くなった尿道周辺をレーザーで焼いて炭化させるということだ。確かに術後の朦朧とした中でも局所的な痛みはどこにも無い。

 

ただ、目覚めてから下を見るとチン◯ンの先から鉛筆くらいの太さのビニールチューブが奥まで刺さっている。ゲゲゲッ!仕事で使うのと同じようなチューブだ。別に細いヤツが1本と、生理食塩水の点滴が各1本。

男性器としての役目をとっくに終え、フニャフニャクタクタと身を縮めながらも、泌尿器としての立場をなんとか保持している同い年のムスコに、よくまあ差し込めたとまずは感心する。

膀胱の中の尿を速やかに体外に出す為とはいえ、こんな太いチューブをどうやって奥まで入れたんだ! 尿に血液が混ざらなくなったら外してくれるというが。

ああ、看護婦さん、1分でも早くこの太いヤツを引き抜いてくれませんか!

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