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春は鳥から

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大雪の影響は4月になってもまだ続き、例年の里山歳時記からしても半月はゆうに遅れていて、道路以外はまだ一面の雪景色。いつもの年なら今頃は口にしているはずの山菜たちもまだ暗い雪の下。週末の暴風雨で積雪はかなり減ったし、5月の半ばまでには暦の遅れに追いつくということを判ってもいる。それでも今はまだ、窓の向こうの景色のどこにも、はずむような春は見つからない。景色は冬のままだが、聞こえる音は春の騒がしさに変わってきた。明るい林に鳥たちが戻って来たのだ。毎年一番乗りのアオジのように、小さな体で遠くインドシナから戻って来たヤツもいれば、もの言わずジッと冬を耐えてきたゴジュウカラやシマエナガも元気な姿を見せ始めた。 見通しの良い森の中には、小さいけれど明るく張りのある小鳥たちの地鳴きが満ちている。恋の季節はまだまだなので、謳いあげるような囀りではないが、春を迎えた安堵と希望に声も膨らむ。 大きい鳥たちも黙ってはいない。ミヤマカケスたちがリャーリャーと鳴き交わせば、ピューイッ!ピューイ!とヒヨドリがはしゃぐ。この森でいちばん大きな声の主はクマゲラだ。毎年のように数が増え、何をするにも無頓着に大きな音を出

根開き

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平年の根雪の終日はとっくに過ぎたというのに、関東ではもう桜が散っているというのに、腰の丈をゆうに越すほどの雪が、無言で春を遠ざけています。 それでも、山の斜面では根開き(ねびらき)が始まりました。 一年中で今がいちばん光溢れる森の中。 柔らかくそして万遍なく林床に入り込んだ太陽が、樹皮に反射して幹のまわりを解かします。 ほんの2週間ほどですが、この堅雪の季節が楽しみです。 昼間解けた雪が夜の冷気で固く締まり、音立てて跳ね上がる青々とした笹もまだ厚い布団の下。明るい森の中をツボ足のままどこまでも歩けます。イタヤの枝先には甘い滴が光り、シラカンバの幹に耳を当てると、梢に向かって吸い上げられる樹液が、密かにズズズと命の春を知らせてくれます。遅い春でも春は春。もう少しだけ残雪期の自由が楽しめそうです。

アトムの子

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<戦争を知らない子供達><団塊の世代>そして<アトムの子>という代名詞で呼ばれる戦後生まれの世代も、気が付けばベビーブーマーからどんどん高齢者の仲間入りです。初めは漫画で、後には白黒TVのアニメで<鉄腕アトム>にくぎ付けになってから半世紀。我々の世代は、夢と現実をないまぜにしながら大人になり、きちんと自分たちの社会にジャッジすることなく過ごしてきてしまいました。♪こころ優しぃ〜科学の子ォ 10万馬力だ鉄腕アトム〜・・と歌いながら、きっと未来は素晴らしい。原子の力が約束してくれる。その想いは永遠の未来に続いていると信じていました。 ちょうどその頃、東海村の原子炉に<未来の火>が灯ったと社会科の教科書で習い、原子力の平和利用が将来ぜったいに必要だと教えられました。やがて全国各地に原子力発電所が作られ、原子力空母や原子力潜水艦など、<原子力>がどんどん耳馴染みのあるワードになっていきます。その一方で、ゴジラの誕生から放射能の恐ろしさを知り、広島や長崎の悲劇と絶望を知り、そしてチェルノブイリやフクシマを体験することになります。太陽のような未来のエネルギーも、放射能の底知れない恐怖も、それが同じ

蜜月

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工房から30Mほどのところにある、重なった倒木の下の広い空間を冬の別宅にして、もう2週間以上もルルとショーンのハネムーンが続いている。本来の巣を引き払ったわけではなく、ときおり様子を見に行っているようだが、最近はほとんどの時間をこっちで過ごしている。 吹雪の日には2頭でその愛の巣にこもり、天気の良い日はその塒のすぐ上にひらけた南向きの斜面で、ときどきじゃれ合いながら、気持ち良さそうに日向ぼっこを続けている。イヌ科の交尾は一発必中のはずだが、キツネは違うのか。あらぬ声を漏らして交尾する現場を何度も見かける。 この写真がそうだ!・・と言いたいけれど、残念ながら(?)マウントの体勢をとって上に位置するのはメスのルルだ。慌ててカメラを取りに戻っている間に交尾は終わり、甘い脱力の余韻に包まれている様子を観察することになった。 ショーンの視線はこちらを認めているが、50Mほどの距離が緊張を薄めるのだろう。為されるがまま、けだるそうに許している。お互いに鼻先や口元を舐めあったり、首の後ろをあま噛みしたり、時々うっとうしそうに身体をかわしてジラしてみたり、メスなのにオスの上に乗っかってみたり・・。なん

アベノミクスはええじゃないか?

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<ぶら下がり>や答弁で話す時の、含み笑いを押し殺すような安倍さんの顔が気持ち悪いんです。 イチかバチか強気のポーズでスタートしただけなのに、あれあれと円安は進み、予想外に株価は上昇。 政府も与党も、思惑を大きく上回る市場の反応に、半信半疑ながらも表情だけはしたり顔です。前政権への底知れない失望を取り込み、思いがけなく手にした大量の議席をバックに、ままよと一歩を踏み出した赤信号でした。 でも、後ろを振り返ると、経済界を始め大勢の国民がついて来るじゃありませんか。こうなったらこのまま前に行くしかありません。実現が可能であろうとなかろうと、政治なんて大事なのはスローガン。景気なんて皆が良くなると思えば上向くもんです。そう、結果なんてものは後から付いてくるもんなんです。江戸末期にも同じような社会現象があったじゃありませんか。 みんなこぞって「ええじゃないか、ええじゃないか・・」と、お囃子に合わせて踊り狂いましょう。そうです。社会不安も景気の悪さも吹き飛ばしてしまえばいいんです。???ってか。「聖域無き関税撤廃が大原則ではないという言質を得た」と、何一つはっきりしないまま、党内の8割の反対派を無