両方の耳から容赦無く侵入する無数のコエゾゼミのジーーーッという鳴声が、頭の中の後ろ側で共鳴し、周辺の、そして吸い込む空気まで熱してくれています。まるで、広島の、また長崎のヒバクの日を思い出させるような暑さです。 したたる汗が目にしみ、顎の先から滴り落ちるとき、眼をつむったまま下を向いて山の涼しさを想う自分がいます。例えば、白雲岳避難小屋うら手の水場。 秋まで残る雪渓は少しずつ解けてガレ場に滲み込み、一度地中に隠れた後に再び勢い良く岩の間から噴き出します。絶え間なく湧き出る水をしびれる両手で口に運ぶと、ここにしかない冷たさで咽の奥の後頭部に疼く痛みを残してくれるのです。 例えば、日高山脈の盟主、幌尻岳の北カールに突き上げる七の沢。 幌尻山荘の前から沢に入り、ナメ滝の真ん中をジャブジャブと進み、釜があっても捲かずに飛び込みます。大滝も敢えてへつらずにシャワークライムで乗越し、そして涼風吹き渡るカール底に飛び出して、更なる高みを仰ぎ見るのです。 例えば、山上のテン場で目覚めた朝。 眼下の沢から吹き上げる冷気に身を縮めながら、雲海の向こうから差し込む陽光に顔を向けて少しの暖かさをもらいます。身
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大人のキャンプ
登山や海辺の旅を除いて、キャンプ場を使うようなキャンプで大人だけというのは、思い返してみれば数十年ぶりのことです。我家を含め、いつも一緒だった親しい家族も、小さかった子供たちが成長して親元を離れたり、結婚して子供が出来たりと、キャンプといえば大人数になるのが常でした。それはそれで楽しみなことではあるのですが、ちょっとだけ子供や孫のいる日常を家に置いて、思いきって3組の中高年夫婦だけで出掛けたのです。 大人数だと、幾つもの話題が同時に飛び交い、赤ん坊が泣き、犬たちが吠え、焼肉の煙に燻されながら、でもそれはそれで子供たちの心の形成に決して悪い影響は無かったと思います。しかし、今回のキャンプは大人だけのゆったりキャンプで、こういう時間も悪くは無いなァ・・と。 ふだんは自分でもグルメの対極を自負していますし、ガラにもないとも思いますが、時間は充分に使えるし、昔を思い出しながら十数年ぶりでダッチオーブン料理なんぞに挑戦してみました。 以下は、ワリと好評だった<スタッフドチキン>のレシピです。*大きめの丸鳥にまんべんなく塩コショウをすり込む。わきの下、股の間、ワタを抜いた腹の中も。 *腹の中に
少年?
ひと月ほど前から、草地の向こうの林の中に子ギツネの気配がしてはいたのです。 初めて目にしたのは2週間前。 開け放った奥の作業場から何かが動く気配。 山の中にある作業場です。 小鳥、蝶、蜂、鼠、蛇と、人間以外のいろんなお客さんが訪ねてくれます。 んっ?もしかして、警戒感の薄いルルが興味を抑えられずに足を踏み入れたかな? 椅子に座ったまま振り返ると、日陰の草地ではルルとショーンが顔や鼻を舐めあってのんびりと寛いでいる姿が。 じゃあ何の気配かな・・? 足音に注意して隣の部屋を覗くと、その瞬間、ちっちゃいキツネといきなり目が合ったのです。 最上級の驚きをその眼球いっぱいにたたえ、四肢をおもいきり踏ん張ったまま、人間でいうと小学1年生くらいのキツネの子が硬直していました。 長くフリーズしていた訳ではありません。一瞬ののちには飛び上がって向きを変え、くつろぐ親達のすぐ脇をかすめて全速力で林の中に消えてしまいました。その頃からです。天気の良い昼下がりなど、親達の後ろから2頭の子ギツネがこけつまろびつ開けた草地に姿をみせるようになったのは。 2頭の子ギツネは兄弟のはずですが、作業場に入ってきたの
裸の王様
参院選のスタートに安倍さんは福島を選んだ。 「フクシマの収束無くして強い日本の復活は有り得ません。福島の復興こそが我が政権の一丁目一番地であります。」 そう口にしながら、全国の原発再稼働に躍起になり、海外への売り込みに労を惜しまない。北海道にも姿を見せたがTPPには全く触れず、きわめて限られたブランド農産品の成功を例に挙げて、農家の所得倍増と言うモチの絵を置いてそそくさと帰った。衆院選に敵失大勝利した当初は、日銀と組んでのインフレターゲットを経済再生の柱と説いていたが、株価高騰と円安が思いのほかの成果を生んだころから、<レーガノミクス>に自分の名を冠した<アベノミクス>を何百回も連呼して、慇懃ながら株価上昇を自画自賛するようになった。 実体経済がどうであろうと、リーダーが率先して赤信号に踏み出し、勢いに任せて皆でえぇじゃないかと渡り出すと、信号の意味を無くせることだけは確かに証明した。リーダーが国民に示すべきは目先の利益だけではない。将来を見据えたビジョンではないか。同時に、自分自身を形作る哲学と思想ではないか。 TPP、消費税、エネルギー問題、憲法改正、国防軍など、選挙に勝つためのマ
オートキャンプ事情in北海道 その3
モータリゼーションと共にニーズも変わり、今では殆んどの利用者はクルマで出かける。そして、多くのキャンプ場は豊かな自然環境の中にあり、静かで落ち着いた時間を惜しまずに提供してくれる。 「さすが北海道のキャンプ場は静かでサイトもゆったりしてるしリーズナブルだ。やっぱり思い切ってキャンパーで来て良かった。」そんな道内外からのキャンパーにとって、大切なのが確かな情報だ。北海道という島は、人口規模といい大きさといい、何かをテーマに1冊の本にするにはちょうど良いデータ量のようだ。 そのせいもあってか、北海道を対象としたキャンプ場ガイドブックは毎年3誌が発行されている。道内のキャンパーはもちろん、道外からキャンプ旅行に来る人たちも必ず入手するからか、一定の発行部数が見込めるので、どの出版社も重複するのに止める気配が無い。毎年買い換える人はそうはいないだろうが、数年も経つと、記憶も曖昧になったり最近の情報を確認したくて最新版を手にすることになる。近頃ではどのガイドブックも、詳細な情報(こりゃ電話取材で済ませたなと思える部分もときにはあるが)とカラー写真の多用で、出費に充分見合って余りあるし、また、その