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裸の王様

参院選のスタートに安倍さんは福島を選んだ。
「フクシマの収束無くして強い日本の復活は有り得ません。福島の復興こそが我が政権の一丁目一番地であります。」
そう口にしながら、全国の原発再稼働に躍起になり、海外への売り込みに労を惜しまない。

北海道にも姿を見せたがTPPには全く触れず、きわめて限られたブランド農産品の成功を例に挙げて、農家の所得倍増と言うモチの絵を置いてそそくさと帰った。

衆院選に敵失大勝利した当初は、日銀と組んでのインフレターゲットを経済再生の柱と説いていたが、株価高騰と円安が思いのほかの成果を生んだころから、<レーガノミクス>に自分の名を冠した<アベノミクス>を何百回も連呼して、慇懃ながら株価上昇を自画自賛するようになった。
実体経済がどうであろうと、リーダーが率先して赤信号に踏み出し、勢いに任せて皆でえぇじゃないかと渡り出すと、信号の意味を無くせることだけは確かに証明した。

リーダーが国民に示すべきは目先の利益だけではない。将来を見据えたビジョンではないか。同時に、自分自身を形作る哲学と思想ではないか。
TPP、消費税、エネルギー問題、憲法改正、国防軍など、選挙に勝つためのマイナス要因には一切触れず、不都合な真実や、変化に伴って生じる傷みに口を開くことも無い。

国民はみんなどこかで醒めている。安倍さんがはしゃげばはしゃぐほど、口にする言葉に姑息さと危うさを感じている。そう、本当はこの人が裸なのは皆知っているし、フェアで高潔であるべき一国のリーダーとしては合格点を与えたくない気持ちもある。
かといって野党は対抗軸も打ち出せず、哀しいかな今回の選挙ではあまりに非力だ。
低投票率が予想される今回の選挙が、後になって「後悔先に立たず」の言葉と共に、この国の人々に強い<あきらめ>をふりかけることの無いように。

「日本が世界の中心に立ち、世界中をリードしていく強さを取り戻す。」と目の前のTVから安倍さんのプチナショナリズムが聞こえてくる。ここでまた自民党が勝利し、隠していた本心の覆いをを徐々に落としながら、過半数を御旗に強引なハンドルさばきが始まるのか。

このサムライの国のリーダーに、美しさとフィロソフィーを求めるのは詮無いことなのだろうか。

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