庭から見上げる夜空は、これまで見たことがないほど不気味に美しかった。家々の明かりも街灯も、遠くの高層ビルで瞬く赤い点滅灯さえも消えて、190万都市札幌が夜の闇の底に沈んでしまった。全ての人工の光りが失せた北海道の上空からは、無数の星が眩しいくらいに地上を照らしつけ、ふだんは薄黒くしか感じられない雲が、星空に白く浮かびながらゆっくり流れて行った。9月6日、夜中の3時8分にその地震は起きた。 砕石工場の巨大なフルイに突然投げ込まれたような衝撃に、跳ね起きると同時に暗闇のなか枕元のタンスを押さえる。タンス自体は金具で壁に固定してあるが、上方3〜4段の引き出しが意思でも持っているかのように飛び出そうとする。揺れが納まるとまず電灯をつけて妻と母の無事を確認。 割れた花瓶のガラスを集め、足許に落ちて散らばる何やかやを拾い集めているときにその暗闇が来た。 懐中電灯とラジオを見つけ出し、停電がウチだけなのか、地域全体のことなのか、周囲の状況を確かめようと庭に出たときに冒頭の星空を見ることになる。その時点でのラジオの速報は、震源が苫小牧東方であること、津波の心配は無いこと、今後しばらくは激しい揺れに注意
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吊り橋二題
札幌市を南から北へ貫く、石狩川支流の豊平川。上流域が幾分緩やかになって中流域が始まるあたりに<十五島公園>という河川敷の公園があります。その名にあるように、流れの中から幾つもの岩が島のように顔を出し、渓流の趣を楽しめる古くからの名所として知られています。 初めて立ち寄ったのは今から40数年も前になるでしょうか。 その頃ここは市内の中学校や高校の炊事遠足のお決まりの場所で、札幌の子供達はこの河原で火を熾し、カレーライスやジンギスカンを楽しんだものでした。 ゆとり教育の時代が終わり、そんな賑わいもあまり聞かなくなったようですが、今でも公園の駐車場の一画には売店があり、お休みの日やお天気の良い日には炭とか肉を売っています。そんな公園の脇を、この四半世紀毎日のように通りながらも、立ち寄った覚えがありません。何年か前にこの公園の中の吊り橋がリニューアルのために工事中だったのを思い出し、気まぐれ半分にのぞいてみました。 人と自転車用の細い吊り橋を渡った流れの向こうには人家が少なく、車社会になった今では生活の為にここを渡る人はありません。まあ河川敷公園のアクセントといったところでしょうか。こんな橋を
スマホめ!
(知らなかったなんてことがある訳はないのだが)知らない間に春が夏に変わり、知らないうちに暑さのピークもお盆も通り過ぎて、朝夕の空気は秋の冷たさ。 歳をとると一年が早いのはかなり以前から身にしみているが、自分がもうジジイだと自覚しはじめた頃から加速度的に一年が短くなってきた。知らないうちと云えば、使っているスマホの画面から知らないうちにLINEやそのほかのアイコンが消えてしまった。電話だけはつながるのだが、その他のアプリケーションはアイコンをタッチしても『インストールされていません』との表示が出て、ことごとく使えなくなってしまった。 情けないことだが、こういう<神のツール>に関しては全く知識が無い。身近な者に聞いてみるが、素人レベルがいくらいじくりまわしても回復しない。振り返れば前兆は確かにあった。半年くらい前からときどき『内部ストレージがいっぱいです。アプリやデータを削除してください』という表示が出て、おそるおそる保存してあった何枚かの画像や使ったことのないゲームを削除したことがある。しかしそれでもしつこく表示が出るのでコイツを買ったY-mobileの店頭へ持って行って店員に訊くと、も
デジャヴ?
室蘭で車中泊
先日のこと、かねてより懸案だった<室蘭やきとり>を食いに行こうと急遽思い立った。 <やきとり>とはいうものの鶏肉ではない。 豚の精肉を串に刺して軽く塩を振っただけ。 ネギもアスパラも挟まない。 ただの白い薄切りの精肉にたっぷり辛しを塗って口に運ぶ。 これがウマい!何故かウマい!ビールが進む。 その昔、今は亡きローリー達としこたま喰って呑んだ記憶が忘れられない。夕方早めに仕事を終え、2時間ほど走って室蘭へ向かい、白鳥大橋たもとの室蘭道の駅<みたら室蘭>にキャンパーを置いて、繁華街までタクシー拾って呑みに行こう。・・これが道中で家人と考えたプラン。道の駅の駐車場に入ってみたものの、タクシーなんか待ってても全く来そうもない。 しょうがないからどっか街の中まで運転して行くか。 あ〜あ、この時点でノンアル確定。テンション降下気味。 中心街まで行って駐車できそうなところと旨いものを食わせそうな店を探す。 「ええっ!ウッそう」と何度か口をつくほど聞きしに勝るシャッター街。 <鉄冷え>と称される鉄鋼不況はここまで厳しいものなのか。何ブロックか歩いて歩いて、赤い提灯の先の暖簾を押し分け、そこそこ旨いもの