ここ2週間以上、毎朝の通勤途中に向ける視線の先で、まったく姿を見せなかった無意根が白く光って現れた。
北海道のこの秋は暖かい日が続いて、平年は札幌の初雪が10月28日だというニュースの情報にも真実味が無い。
早い年なら9月の後半に白い姿を見せる無意根山だが、やはり遅かったのだろう。近くを走る国道の峠情報では何度か雪模様が伝えられていたから、下界から見えない間にも何度か山頂を白くしていたことは想像に難く無い。
北から南に続くなだらかな稜線を見ながら、今頃あそこはどんな状況かとふと考えた。
夏道は雪の下だしとてもツボでは歩けない、もう少し雪が締まらないと笹やハイマツに足を取られてスキーでも歩けない。
想い巡らせても初冬のこの時期にあそこを歩いたことがない。
「おそらく・・・、きっと・・・。」と、難儀しながら登る自分を想像するが、ひとつ深いため息で我に返る。
体力も気力も衰えたいま、もう冬にあの稜線を辿ることはないだろう。
ただ、そこにあることが自分にはうれしい。