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カムイの運命

あの親子のヒグマを最初に見掛けてからもう10日を過ぎる。ここ何日かはその痕跡が認められないので、もしかしたらここよりももっと奥へ移動したのかもしれない。いや、そうであってほしい。

数日前、2台の4駆車が我が工房の傍に停まり、オレンジのベストにライフルを抱えたハンターたちが降りてきた。誰か熊の姿を見かけた人が警察にでも通報したのだろうか。

なかなかクルマに戻ってこないハンター達と、続けてやって来たユニック付きの2t車に、いやな予感と想像だけが駆け巡る。

子連れの母熊は子グマよりも先に逃げることはまず無い。危機感が高まると子供を先へとうながして自身が立ちふさがるから格好の的になり易い。
もしそうなったとしても、3頭とも一緒に殺されることは考え難い。その場合に、まだ小さい当歳の子は母熊から離れようとせずに捉えられることが多いようだが、母熊に全てを依存していた2年目の若いクマは、その場の危機から逃れたとしてもどうしていいか分からない。
やがて彷徨の末に人里近くに痕跡を残したり目撃されたりして駆除されることになるのか。

折しも、利尻島では106年ぶりの羆騒ぎ。オスの成獣が20kmの海を泳ぎきって島にたどりついたらしい。フンや足跡を発見した島民達の緊張ぶりがニュースになっている。

居ないはずのヤツが突然やってきたら、そりゃあニュース性は高い。

しかしここに居る彼等は、居て当たり前の環境で、しかも今のところ何の悪さもしていない。

人里から離れたこの土地のどこかで、カムイとして、無事に野生の一生を終えてくれることを願うばかりだ。

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