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全層雪崩

晴れた朝の通勤時にはいつも視線の先にあり、四季折々に移り変わる姿を楽しませてくれる<無意根山>ですが、今年は例年と違って大きな全層雪崩が発生したようです。

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東に向かって切れ堕ちたこの斜面は、長い間に地滑りと浸食で削られた地形ということですが、東壁と呼びたくなるほど上部が急傾斜で、過去には北大生らの滑落事故なども発生して慰霊碑も建てられています。
画像右手の白い雪面の下には直線的に稜線に向かう登山道があり、喘ぎながらの登りと、意に逆らって駆け下ってしまうまるでジャンプ台のようなこの道を、旧くはシャンツエと呼んでいました。

この稜線の向こう側、つまり西側は切れ落ちることなくおだやかな曲線でゆっくり立ち上がっていることから、冬には日本海から運ばれて来た大量の雪が、この壁の上部に巨大な雪庇を形成します。近くで見る雪庇はひさしというにはあまりに大きく、まるでビルが崖の上にせり出したようで、覗き込んでも下を見ることはできません。
毎年3月から5月にかけてこの巨大な雪庇が崩落し、筋状の雪崩跡を黒く見せてくれるのですが、下界から見る今年の景色は少し違います。

画面中央の雪崩跡の上部が黒々と見えている部分は密生した笹原で、雪解けで地面との摩擦抵抗を失った斜面全体が大きく滑りはじめたものと思われます。この長い稜線から推察すると、発生源の幅は百メートル近く、デブリ末端までは500メートル前後もあるでしょうか。
登山者すら立ち入ることのないこの斜面の雪が大都市札幌の水源で、その白さをいつでも目にできるのは、もしかしたらすごく幸せなことかも知れません。

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