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寒中食事会

一昨日の朝のこと。いつも通りの通勤途中にふと目に留まった。
道路から畑を挟んだ50Mほど先の灌木の斜面に大量の血痕。その中心には倒れて腹部をあばかれた立派な角のエゾシカ。周辺の木の枝には夥しいハシブトガラスが止まってやかましく鳴き交わし、地面では30羽ほどが雪上の屍骸から真っ赤な肉を喰いちぎっている。

こうした光景には以前にも会った。この場所から200Mほど先の道端で、餓死したエゾシカの遺体にカラスやキツネが群がって盛大な鹿肉パーティーがもようされたのだ。
そして翌日には、あたり一面すり鉢状に雪を沈めるほどの足跡と僅かな骨のかけらだけを残してその一幕を終えた。

いつもなら後部座席にカメラバッグが転がっているのだが、この日に限って運悪く自宅に置いてきた。
この光景は明日にはきっと消えてしまう。暗くなるまではこのカラスどもが、そして朝までの闇の中ではキツネたちが、氷点下20度近い冷え込みのなか、凍れて歯が立たなくなる前に喰らい尽くすだろう。朝になれば、引きずれない大きな骨だけを残して、肉や内蔵はきれいに他者の命に移り変わる。

そして昨日の朝、カメラを用意してクルマを停めた。降りしきる雪のせいもあったが、やはりもう何も見えない。

マイナス10度を下回るの雪の上で、盛大な食事会がもようされた。やかましくそして密かに。

ということで、残念ながらその画像はありません。

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