頭上のありえない方向から人の声。??・・見上げると送電線の鉄塔の最上部に人影が。
目を凝らすと送電線にぶら下がる2人と鉄塔に掴まって別の仕事をする3人の影が逆光の中に蠢いている。
その様子を見ながら、ふっと想い出したのがストレンジフルーツというワード。
緊張を強いられながら仕事をしている人には失礼だが、「奇妙な果実」という図柄を連想してしまった。
ビリーホリデイが血を吐くように歌った「ストレンジフルーツ=奇妙な果実」は、つい数十年前まで米国南部で横行していたリンチ事件のことだから、この人達には全く関係がないのだが、ぶら下がる人達に古い映像の記憶が突然戻ってきた。
奴隷解放の南北戦争で南軍だった諸州、なかでもデイープサウス=深南部では、白装束のKKK=クー・クラックス・クランに代表されるような秘密結社が暗躍し、自立しようとする黒人や白人優位主義に反対する者をリンチにかけ、死骸を木から吊るして気勢を上げた。
折しもニュース番組では、ケンタッキー州ルイビルからモハメド・アリの追悼式典を伝えている。黒人ながら白人を倒して金メダリストとチャンピオンになったが、レストランでは拒まれ、バスでは後部の黒人席を指示されたという。奴隷の名前だからとカシアス・クレイから改名し、同じ有色人種を殺すのがいやだとベトナム戦争の兵役を拒否して有罪になりながらも、奇跡のチャンピオン復活を成す。
その間、各地のゲットーで起きる暴動やブラックパンサーなどの非合法集団による白人優越主義への反発、一方で非暴力の公民権運動やワシントン大行進。
この半世紀、アメリカの人種差別は多くの暴力と非暴力の積み重ねで好転してきたのだろうか。
見慣れない図柄をみて、ずいぶん連想が飛躍してしまった。