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静かな朝

焦がれて待っていた訳ではないのです。その音の無い朝は今日とつぜん訪れました。
北国の生活者なら誰もが幾度となく体験する予感。目覚めた瞬間に呼び覚まされる、古くておぼろな記憶でしょうか。

全く音が消えた時の無音の音が聞こえてきます。微細な雪の結晶が天から降りそそぎ、空間に漂う静けさという音さえも捉え込んで地上の白さに封じ込めてしまうからでしょう。耳のずっと奥を、かすかに聞こえるシーーンという音が支配します。
暗闇の中でこらす目を窓の外の白い気配が覆い、起き上がってカーテンに手を掛けるのと同時に、世界が真っ白に変わってしまったことを知らされます。

工房から数キロ離れた小金湯の観測点で48センチと、11月の積雪としては62年ぶりのドカ雪だそうです。
ひと月以上も前に白いものを見てから、冬タイヤに履きかえ、夏のあいだに伸びすぎた庭木の刈り込みを済ませて、何となく冬支度を進めているように思っていましたが、このいきなりの大雪が準備不足を思い知らせてくれました。
まだ大丈夫とタカを括っていた除雪機のメンテを慌てて済ませ、ワイパーを冬物に替え、防寒靴をひっぱり出しながら、「やっぱりなあ」とちょっとだけ反省。

静かな朝は、そこに暮らすものみんなを揺り起こして冬の始まりを告げると、この土地にどっかり腰を下ろしました。

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