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ジェラシー?

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二ヶ月くらい前の朝方、留萌沖を航行中の<そうや>(昔の南極観測船。今は<しらせ>に南極を任せて北の海で活躍)から電話が入った。北極や南極で極地の気象や氷を研究している知り合いの准教授からだ。数日前に台風並みに発達した二つ玉低気圧が北海道に猛烈な嵐をもたらしたが、ちょうどその頃にオホーツク海上で流氷を観測していた<そうや>も巻き込まれて大変だった様子。
「氷厚測定器の防水ケースが大時化で壊れた。昼過ぎに小樽港に入ったらそのまま北大の低温研究所に運ぶから、悪いけど修理が可能かを低温研に来て見て欲しい。」

仕事の手を休め、約束の時間に出かけたのは言うまでもない。夏には北極に持って行くがそれまでは使わないとのことなので引き取って帰ってきた。そして先日から修理に取り掛かったのがこの画像。
他には無い初めてのものを作るといっても、実際に極地に行ってテストすることは出来ない。北海道の冬山での体験や、知識と想像をさらに拡げながら頭の中でシミュレーションを何度も繰り返す。
壊れたものを直すときもそうだ。使用状況やその原因がフィードバックされることもあるが、なぜ壊れたのか、強度の問題なのか、位置が悪いのか、もっと良い方法は無いのか、納得できるまで考え、そして作業に掛かる。

自分が作った物が、想像しかできない場所で使われている。
50Mものブリザードの中、孤立無援の南極大陸のテントから、持って行ったソリが活躍していると、妙にリアリティーのない衛星電話を受けたこともあるし、この冬には「<しらせ>が3年ぶりに昭和基地まで着岸できたが氷厚測定器が6Mの氷海の航行に役立った。」との衛星電話をもらった。

極地用に作ったものがこうして修理等で戻ってくるとき、少しでも役に立っていると安堵すると共に、「コイツめ、俺の知らないところまで行きやがって」と、無機質な道具にむかってちょっと嫉妬のような気分になるのは何故だろうか。

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