繰り返しタイヤに踏みつけられ、何ヶ月も冷気にいたぶられて分厚く凍て付いた道路脇にミズナラの枯葉が貼り付いていた。
秋の終わりにこの枯葉が葉としての役割を終えてからずいぶん時間が経っている。それに全ての落ち葉は厚い雪の布団の下で土になる準備をしているはず。どういう力がどんな経緯でここに運んだのか。春まで枝から落ちずに冬芽を守るカシワの葉ほどではないが、ミズナラも、特に若木の枝先の葉は、自分の足許に芽吹いた来春の命を冬になっても離そうとしない。雪つぶてに引き剥がされ風に運ばれてここまで来た。
この画像。真上から撮ったので判りにくいが、枯葉の周囲は5センチほどの穴になっている。もちろんこの深みはこの枯葉自体が溶かしたものではなく、春の太陽がその力を示したものだ。しかしそれならばなぜ一様でなく穴ができる?これこそこの枯葉の力ではないか。陽光を反射せずにその茶色の葉に蓄え、周囲の氷をゆっくり水に変えていく。そんな当たり前の事と子供でも笑い飛ばすだろうが、ならばじっと我慢して氷に掌を押し付けてみてほしい。5センチどころか5ミリの窪みだって作れないはず。一枚のわくらばが春呼ぶ力を教えてくれた。
カシワの無いこの辺りの山では、さすがにこの時期まで枝先で頑張っている枯葉はなく、ドライフラワーになったサビタの花が静かに春を待っているだけだ。