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元気な人 その2

セーリングカヤックの開発に奮闘しているN社長に、直接会って確認したいことがあってK社に電話をかけた。
「申し訳ございません。今しがた帰宅致しました。」 ・・って? 早いな、5時前なのに。
部長が代わって、ほんのちょっと当惑気味に話してくれた。なんでもこのところまだ暗い4時頃から出社してきて、たったひとり工場の奥の専用スペースで仕事をしているのだそうだ。セキュリティー会社との契約は午前7時なのに、無理に頼んで暗いうちから解除してもらっているという。

「わかるっ!」 心の奥に共振するものを感じて、思わず大きめの声になってしまった。

俺もそうだもの。 同じ<ものづくり屋>として、ジッと寝てなんかいられないんだよねNさん。
夢の中なのか、それともどこかで覚醒しているのか、そんなことどうでもいい。新たな形状を思い描き、動きや軌道を想像し、作業の手順を組み立てる。眼をつぶったまま繰り返し繰り返し考えていると、無意識のうちに身体を起き上がらせる力に取り付かれる。こうなるともう、メモや簡単な絵に描きとめてまた眠りにつくなんてできはしない。
家人を起さないようにそっと仕事場へ向かい、夢中で夢の中のイメージをかたちにする。こんな大変なこと、社員にやらせる訳にはいかない。いや、他人にやらせてはもったいない。

新しい機能やこれまでに無い形状など、何かを産み出すときのプチトランス状態は、身体こそ疲労の極限にあっても、湧き上がるパワーが自分を突き動かして、頭の中の一点に集中させてくれる。

こんな人たちのことを<出産マニア>とでも名付けましょうか。
身体はヘロヘロでも元気みなぎっているはずのNさんが、やっぱりちょっとうらやましいのです。

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