除雪でうずたかく盛り上がった雪の上に、いつものキツネたちが寛いでいました。
春を感知して繁殖行動に入ろうとするこの時期には、オスが行動範囲を広げて活発に行動するようになるのですが、今年で3シーズン目を迎えるこのルルとショーンのカップルは落ち着いたもの。割って入ろうとする邪魔者が現れない限り、仲良く一緒に行動することが多くなってきました。
この時も、積まれた雪の上で二頭がくっつきあって気持ち良さそうに休んでいました。
微風に黄金色の毛先がゆれ、周りの空気を幸福感で満たした2頭の表情を、もっと近くで見たくてそっと近づいてみたのです。
3メートルほどに近づいたとき、雪を踏む音に気付いたショーンが飛び上がり、一瞬で10メートルほど先まで駈け去ったのです。ルル(右)の方は身じろぎもせずに眠そうな顔だけをこちらに向け、逃げ出す気配はありません。
工房の中に入って窓から覗いていると、ショーン(左奥)もゆっくりルルの傍らに戻って身を寄せるのですが、しばらくしてまた接近を試みると、やっぱりまた同じ場所まで遠ざかるのです。
この10メートルの距離が、ショーンが安全を保つために必要な空間なのでしょう。
いっぽうルルの方はといえば、こちらが絶対に危害を加えないと思っているのか、もう少しで手が触れる距離まで逃げようとはしません。白状すると、2年ほど前に一度だけ、眠っているルルに実際に触ったことがあります。さすがにそのときは驚愕に眼を見開き、口を開けて排除しようとした犬歯が指に当たって少しケガをしたのですが、その傷よりも驚かせてしまって申し訳ない思いがしばらく消えませんでした。
親近感はあっても相手は野生、お互いの距離は大事にしなければいけませんよね。