安倍さんの歩みはこのところますます前傾姿勢を強め、今にもつんのめるんじゃないかとさえ見えてくる。
まだ一年すら経っていないのだが、口にこそ出さないものの、政権に復帰したときからやりたいことは決まっていたようだ。まずは<デフレ脱却・経済再生>をスローガンにし、日銀までも動かして大胆な財政出動と通貨操作。後先考えるよりもイチかバチかの見切り発車。長い沈滞のトンネルに辟易していた国民がヤケッパチで踊り始めると、思いのほか好転したムードに、自分でアベノミクスを口にしながら、神輿の上に乗って成長戦略の旗を振り始めた。
支持率は高いし敵もいない。この勢いに乗って、増税前の今ならやりたかったことができる。
『手始めはTPPへの参加。抵抗もそれなりにあったが、これはまぁうまくいった。みんなあっさりあきらめて、今では損得勘定花ざかり。正面から反対する者はもういない。
次に原発の再稼働と東電の救済。このところの小泉さんの言動は無視できないものの、世界に向けては「コントロールされている」と言っておいたし、日立・東芝・三菱と一緒にあちこち原発の売り込みもやった。
それから集団的自衛権の行使だ。これもまあ、解釈次第でどうにでもできるのだが、オスプレイを引き込んだし、憲法改正についても振っておいた。
愛国教育。これも大事だ。教科としての道徳教育を文科省にやらせよう。
多少強引でも今国会での成立を目指す特定秘密保護法案。これは権力を自由に行使するためには絶対あったほうが都合がいい。『何が秘密かって?私が秘密にしたいことが秘密なんです。』
前のめりの姿勢は前進あるのみ。道が少々ずれたってその姿勢では目の前しか見えないし、まして転ばないように気を付けるのが精一杯だから簡単には止ることもできない。
昨日、またしても最高裁から一票の格差について出された<違憲状態>という判決に、自分が約束した覚えは無いとダンマリを決め込むが、それは昨年末の最後の党首討論のチグハグさが暗示していた。
安倍) 「本当に(首相を)辞めるんですね。辞めるんですね!」
野田) 「ですから(身を切る改革=議員定数削減を)やりましょう。」
安倍) 「本当に辞めるんですね!」
野田さんは自身の退陣と定数削減をバーターのつもりだったのだが、入れ代わって総理になった安倍さんは当然のようにこれを無視だ。
毎回の選挙が<違憲状態><違憲><無効>とされ続けても、もともと政治家に自己解決能力はない。司法はいつまでオトナの対応を続けるのか。