農家のYさんがひょっこり顔を見せた。
「オゥ、まいど! ヤイヤァ しさしぶりだな、元気してたか。 いやいやちょっと寄っただけだから仕事続けてくれ。」
「だけど、こないだの雪にはまいったな。10年に一度の台風だっちゅうから、風ひどいべと思って養生したのにョ。吹かねかったのはいいけど、台風が引っ張り込んだ冷気が入ってみぞれから雪だもな。去年より1ヶ月以上早いっちゅうんだからドッテンこいたでや。
まあ、去年は去年で、遅かったのはいいけど、いきなりノッツリ降ってそのまんま根雪だもの、トンとはねたな。」
「おっと、タバコいいか?やめたんだったな。 そばで吸ったらキモヤケルべ?」
「今から寄り合いあって行かねばなんねんだけどよォ。ほれ、例のテーピーピーよ。おらァみたいな末端の農家が集まって騒いでも、結局どもなんねんだけどな。したけど、ほんとに腹立つど。最初から誤魔化す気満々なのは見えみえだったけど、やっぱりだァ。聖域は断固守るとか、守れなかったらテーブルさ蹴ってでもとか言ってたのに、大ウソだべや。どうせ、なんだかんだズルズルと金儲けのウマい奴らに持ってかれるのよナ。百姓っちゅうのは昔から死なない程度に生かされてたんだけど、もうダメよ。ウチらの仲間ももうみんなガッタガタだし、やめるヤツもいるんだ。俺ももうアホくさくなってきたでや。」
「あらァ、もう昼か。 したら行くわ。 そのうち一杯やるべ。」