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サビタの花

f:id:norlite_designs:20130808082303j:image:w360:rightユキノシタ科アジサイ属。昔この茎の中空の内皮から糊を採ったということから「糊空木」と書いてノリウツギ。それがこの花の正式な和名だが、北海道では誰もそう呼ばないし、その和名を知らない人すら多い。
小さな泡のような花で盛り上がる花房に、たくさんのシロチョウが舞っているようなこの花を、北海道民ならば情緒を込めてサビタと呼びたい。アイヌ伝説をはじめ、いくつもの悲恋をこの白さにまとって、夏の盛りにやるせなく咲く。
蝶のように、花のように見えるのはガク片でできた装飾花で、実をつける事はないが、秋が終わり、厳しい吹雪にさらされても落ちることがない。まるでヨウ素で溶かして葉脈だけにした栞のように、シースルーの花びらが雪景色の中で揺れる。
サビタの語源は、アイヌ語とも東北地方の方言からとも諸説あるが、<さびた>ではなくサビタと書くからエキゾチシズムを帯びて美しい。
道端の、思わず手を伸ばしたくなる高さにたくさんの花をつけ、来年の春までそこを動かず、景色の中に吾を主張し続ける。

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