昨年生まれたルルの子供が、2頭連れ立って姿を見せた。
100メートルほど離れた日当たりの良い雪の斜面には、ルルとショーンが体を寄せ合ってまどろんでいる。
体型はオトナとほとんど変わりないが、まだネコのように高く甘えた鳴き声で若さを隠せない。
半年前までは藪の中から甘えて鳴くばかりで、決して開けた場所に身を晒すことなど無かったのに、今の足取りには警戒に対する自信すらうかがえる。
空腹の様子は痩せ気味の身体から察しが付くが、それでも今日まで初めての冬を生き抜いてきたのだ。深い雪の下のヤチネズミを捕らえるすべは完璧に身につけたに違いない。
時々斜面の方に目を向ける表情からは、ルルと義理の父がそこにいることを認めながらも、気になってしょうがない様子が見てとれる。
同時に、このまま近寄って行けば、母の新しいオトコが立ち上がり、やがて力で排除されることも知っている。
近づき過ぎてトラブルにならないように、哀しみを足跡に残し、2頭の若者は前後しながらゆっくり遠ざかって行った。