昨日アライグマのことを書きながら、いろんな事を想い出した。
北米原産のコイツは現地では「ラクーン」とよばれ、アラスカやカナダの極北部を除いた北アメリカ全域に棲息し、人間に似たしぐさや愛嬌のある表情から、野生動物ながら誰にでも親しみを感じさせる得な生き物だ。後脚だけで2足歩行できるし、お尻をつけて座ることもできる。前脚を器用に使って水で果物を洗う動作は、いかにもきれい好きそうであまりにも有名だ。そのイメージから「アライグマ」の名が付いたようだが、自然界ではそんな行動は見られず、せいぜい水の中に手を突っ込んでカニや小魚を捕らえるくらいらしい。
ずーっと昔の若かった頃、日本からクルマを運んで北アメリカ中を4万キロ以上走り回ったことがある。毎日のようにフリーウェイを走りながら、いやでも目にはいるのが野生動物の輪禍死だ。なかでも小動物で多いのがこのラクーン。北アメリカ全土にいるが中西部から西部太平洋岸、南はミシシッピ流域から北はカナダにかけて道路脇死体の主役を務める。それよりも東はスカンクが多くなるし、北はマーモットやプレーリードッグ、南のメキシコ近辺ではアルマジロも混じる。
個体によってシッポの太さやリング模様にかなりの差はあるが、毛皮としての人気も相当ある。
西部劇の「ディビー・クロケット」の帽子といえば連想できるだろうか。頭をすっぽり包むフワフワの毛皮と後ろにダランと下がったしましまの尻尾。映画の公開当時、このスキンハットは「ディビーキャップ」といわれて一気に需要が高まり、各地で狩猟圧が限界を超えたようだ。
今でも土産物屋にはこのしましまシッポを使ったキーホルダー(今ならケータイ用か)と一緒に、必ずディビーキャップも売られている。
さて、その若い頃、コロラドあたりのフリーウェイを走っていて、前の車がラクーンをはねたのを目撃した。すぐに停車して近づいてみたが、もう彼(?)は一巻の終り。「どうせ死んじまったんだから、せめて尻尾だけでも」と、クルマからアックス(小型のマサカリ)を取り出してしっぽの付け根に一撃。しかし意外なほど付け根の骨は太い。2度3度とアックスを振り下ろすほどに罪悪感がつのる。でも途中で投げ出してはきまりが付かない。
そのバチは翌日泊まったデンバーのホテルで降りかかった。苦労してそのしっぽの骨をはずし、ナイフでしごいて脂を落とし、塩をふってバスルームの窓に貼り付けておいてから外出した。
あ、もう時間だ。 続きはまた・・。