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9月のルル

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ついこの間まで、ボロクズのように体のあちこちに纏わりついていた冬毛をすべて落とし、すっきりした夏毛になった。冬毛に較べて尻尾の太さは半分ほど、体毛も若い柴犬ほどの短い刺毛で見栄えはしないが、そんなことは知ったこっちゃない。イヌ科のキツネがこの暑さを乗り切るための、ある意味適応力なのだ。

夏が終わり、そろそろキタキツネ親子にも子別れの季節が近づいた。
ある日突然、このルルも決然たる態度で子ども達に別離を宣告する。
あまりの理不尽さと、問答無用の母親の勢いに、子ギツネはせつなさを振り絞りながらギャイ〜ンギャイ〜ンと幾晩も夜通し泣きつめる。そして理解不能でも受け入れなければならないことがあることを知り、やがて独りで生きて行く力を自らの中に見出す。
このルルにしても、去年の今頃その試練を乗り越えたのだ。

この時期、断続的に暗闇に響く子ギツネの声は、血が混じっているかと思えるほど聴く耳に辛い。
無関心な虫たちの声や、更に深い淋しさを纏ったヌエの声に鎮められるように、だんだん間遠になる。そして、聞こえなくなったことにふと気付いたら、そのとき若いキツネは生まれ育った場所を離れて静かに新天地を見つける旅に出たのだ。

キツネにも人間と同じように寂しさや悲しみの感情があるかどうかはさておいて、よけいな感情移入は避けなければならない。自然の営みというものに、所詮、人間には何もできないのだから。

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