Blog

ジンギスカン鍋

「今頃かい!」 今日の札幌は8月になって初めての30度超え。7月末までに7日の真夏日があり、そこそこ夏を味わった気になって、ハイ、夏終了ーッ!と思っていたのに、ちょっと動くと滴る汗。「アヂーよぉ」と独りごちながら、木の葉を揺らしてそよわたる風を眺めています。

暑さしのぎの休憩ついでにどうでもいい話を一つ。
先日、日テレ系のTV番組でのネタ。<北海道民は、海水浴といえば泳ぐのではなく、砂浜にテントを張って炭を熾し、ジンギスカンやバーベキューをするのが常識。> さすが「ケンミンショー」。他県民の「えーっ、」というコメントと、北海道民の「エッ、どこがヘンなのよ、常識じゃん。」という噛み合わなさを引き出して大成功。
道民としてこれを弁明すれば、本州各県の海水浴場のように電車で行く訳ではないし、ずらっと並んだ海の家が営業しているところはほとんどないので、クーラーに飲み物や食材を入れて車で持っていくのが当たり前。加えて、春の花見にはじまり、キャンプだ海だ、なんでもないけど集まって庭や車庫でジンギスカン、ヘタしたら学校の運動会まで、とにかく北海道の家庭でジンギスカンをしないウチなど絶対にアリエナイ。

かたちが蒙古軍の兜に似ているからと名づけられ、道内全ての家庭にあって、あまりに馴染み深いあの鋳物のジンギスカン鍋。羊肉の国内消費量の9割以上が北海道というから、むべなるかなではありますが、あの鍋(鍋とはいうが麦藁帽子のつばを上に折り返したような形状で、容器として鍋の役には立たない)が、北海道のオリジナル文化だと思い込んでいる北海道民の実に多いこと。
実はこれ、かなり昔から全国にあるんです。関東方面ではあまり見かけないものの、戦後しばらくして北海道で羊肉食がブームになるずっと前から、西日本ではトンチャン鍋として大いに用いられていました。トンチャンとは豚腸のことで、今では市民権を得てホルモンの呼び名が一般的になりましたが、当時は朝鮮系の人たちのソウルフードとして、北九州や広島など一杯呑み屋の店先に抗しがたい香りを漂わせていたものでした。
通常は普通の肉屋の店頭で見かけることは少なく、自家用として豚を落とした時などに人の手から得られる、言ってみれば珍味の部類だったのでしょう。小学生の頃、先生が知人からたくさんもらったトンチャンを食わせてやるというので手伝ったことがあります。学校の宿直室の土間にブリキのたらいを置き、ただ適当にぶつ切りにしたバケツ一杯の豚の腸をぶち込んで水をはり、裸足になって鼻をつまんで踏みつけるのですが、これが辛い。
何度も水を替えながら腸の内容物がなくなるまで踏んづけます。「よし」と言われるまでの長かったこと。それでも炭火にかけたあの鍋に貼り付けるようにして食べたトンチャンの旨かったこと、それと同時に耐え難いほど臭かったこと。
その後何年かしてからは洗濯機を使うようになったようですが、このトンチャン洗いを一度やると、一週間たっても足がウンコ臭くて閉口した記憶は忘れ得ません。

月別アーカイブ