説明しても判りづらいと思いますが、EMセンサーという名の、電磁波で氷の厚さを測る器械が入るケースです。4M以上もある長いセンサーを中に入れ、砕氷船のクレーンで吊って空中から氷の厚みを調べるのですが、着氷や着雪による器械のトラブルを防止するための、器械をすっぽり覆うケースとして作りました。
海氷研究をされている大学の先生からお話があり、国立極地研究所の依頼で構想をはじめたのが半年前。なにしろ参考にできる形や前例がありません。加えて電磁波に影響が出ないようにいっさいの金属を使用しないのが条件です。想像できる最悪な条件を考えてもなお「人間の想定は簡単に覆される」という事実のみが、遙かな高みから見下ろしています。
「ニコニコしながら赤字だ赤字だって・・。ブヮッカじゃないの!ちゃんとお金にしないとダメでしょ!」「そんなに頑張って、からだ壊したらどうすんの!」
ふふふふ・・。いいんです。ほかに無いものを作るときはいつもそうなんです。夜中に目が覚めたり、身体のあちこちに傷みが出たり・・。 いわゆる産みの苦しみってやつですかァ? 出産マニアとでも呼んで下さい。 何年かごとにこういう大変さを味わい、そしてそれを糧にしてきたんです。
この写真のケースは初めに作った1台で、すでに北極に向かって旅立ちました。カナダの砕氷船で運ばれて、今後5年間北極で使われます。もう1台が今は日本にあって、南極や北極の調査に使用されるようです。
大変だけどおもしろい。生きているうちにあと何度こんな仕事ができるでしょうか。