乳離れした子供たちが巣で待っている。ときどき見かけるルルの行動も、いよいよ旺盛になる子供たちの食欲に応えようと一所懸命な様子が見てとれる。
先日も捕らえたネズミを咥えて立ち止まり、目を合わせて挨拶(いや、何と表現したらいいのか、ほんの一瞬お互いを目で確認し合ったという程度なのだが)した後、確信に満ちたトロットの足取りで巣の方向へ戻っていった。
それは、飼い猫が、獲ったネズミをこれ見よがしの自慢顔で飼い主にみせびらかす行為とは全く違っていて、そこに遊びの要素は全く無い。ただ糧を得て巣で待つ子供に届けるという、無駄の介入する余地の無いクールな日常の行動に過ぎないのだ。
狐立無援。その眼差しの奥には、たった一人で新しい命を産み育てている確かさと誇りが、あふれそうなほど宿っている。