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道端の太陽

f:id:norlite_designs:20120517081936j:image:w640:left明治新政府が北海道開拓のために高給でスカウトした外国人教師が、葉をサラダとして利用する目的で持ち込んだといわれるセイヨウタンポポ。種子にパラシュートを付け、風に乗って100kmも拡散するという戦略と、地中に真っ直ぐゴボウ根を下ろし、春先から初秋までの長い花期で次から次に花を付けるしつこい性格で、その強さが故の憎まれっ子。いまや日本中至るところの道端や空き地に蔓延りまくり、ありきたり過ぎてじっくり観察する人は少ない。

道の両側いちめんに咲いたこの時期のタンポポは、夏や秋の花と違って、じっと見ていると眼を痛めてしまいそうなほど若さが持つ力を発散する。
かつてこのフレッシュで力を秘めた黄色を、カヤックのデッキに使おうと試みたことがあった。しかし、人工の顔料を使って生命力のある黄色を作るのは所詮無理だった。春のタンポポの黄色には太陽が宿っているのだ。
そう思って見ていると、タンポポと太陽は驚くほどに親密な関係で結ばれている。夜間や雨降りに花をすぼませているのは誰でも知っているが、では、どのタイミングで開くのか。夜が明けていくら明るくなっても花を広げるのは太陽が出てからだし、まだまだ昼間の明るさは続いていても、太陽が尾根の向こうに沈むと力が抜けたように花を閉じる。
今朝は日食。開き始めた花たちがいつもと違う弱々しい太陽光に戸惑っていた。

太陽に恋い慕い、顔を見てもらえる時間だけ全力で花を広げる。
「人間なんかに私達の秘密が分かるもんですか」・・そう言われたような気がした。

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