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鹿を喰らう

近所のハンターが、工房のすぐ前で獲った鹿を回収できなくて難儀していた。ひと月くらい前からこの辺りでメスを呼ぶ甲高いラッティングコールを繰り返していた100キロを越すような立派な角の牡鹿だ。ほんの20mほどの距離だが、登り勾配に加えて数年前の台風で生じた倒木が折り重なり、放置されたまま荒れ果てている。二人がかりでも大きなアカシアの倒木を乗り越せないで呆然としているのを見て、高みから傍観している訳にはいかなくなった。結果、結構な汗をかいてクルマに積み込んだのだが、世話になったということで、解体を終えたハンターが鹿肉を持ってきてくれた。

骨からきれいにはずしたロースとモモ肉のブロックだったので、カミさんが腕をまくって鹿肉ローストと鹿肉の赤ワイン煮込みを作ってくれることになった。うるさい子供達は呼ばずに大人だけで味わおうと、先週末に鹿を喰らう会を催すことにした。

で、いつもの仲間が集まったのだが、どうもこれまでのイメージとは違ったようだ。工房の呑み会にこんなお洒落な食事は似合わない。ドラム缶を半分に切った焼き台に脚一本や半身丸ごとをのせ、塩胡椒をぶっかけながら焼けたところから各自ナイフで削いで喰らう。これまでのそんな鹿肉パーティーのつもりで来たようだ。でも、これはこれで美味しくいただきました。

 

 

 

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