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いなむら一志

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窓の外には冷たく乾いた雪が降っている。 全く音の無い空気の中、ただワシワシと降り積もる。今月初めに64才で亡くなったシンガーソングライターの<いなむら一志を送る会>が昨晩ススキノで開かれ、主のいないコンサートに出かけてきた。 稲村さんとは、20年近く前に数年間、TVのアウトドア番組を一緒にやったのが縁だった。番組の絡みながら、わが工房でカヌーやソリを作ったり、山菜を採って食べたりしたことを今でも鮮明に想い出す。歌うときと違ってふだんの話し声は意外と低いのだが、その渋い声や口調もはっきり耳に残っている。 住居とは別に、岩見沢市郊外の山の中に小屋を建て、そこをスタジオとして自力で作り上げていて、時間ができると出かけては困難を楽しみながら暮らしていたようだ。何年も前からその建物や設備のことで、「いろいろ相談に乗って欲しいから来てくれよ」と言われていたのだが、その約束を果たすことができないままになってしまって申し訳ない。 くも膜下出血だったそうだ。知人がそのスタジオで発見した時には、新曲<二月の匂い>のレコーディング作業のまま独り冷たくなっていたという。64才のアーティストの不幸が年明けに続

映画って、ホントに・・

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自分自身の深〜いところから、メロディーのかけらのようなものが姿をチラつかせる。 2度ほど鼻でなぞってみると、何処かで聞いたような曲がつるつると出てきた。何の曲だったかどうしても思い出せない。仕事をしているときや車の運転中にも、鼻腔の奥でしばらく勝手に繰り返されたあと、とつぜんモノクロの情景と共にタイトルが甦った。 映画だ!<ブーベの恋人>だ!ひとしきりメロディーをなぞって納得した後からは、次々と昔の映画音楽が溢れ出してきた。哀愁に満ちた<鉄道員>のテーマ、<第三の男>のチターの旋律、<黒いオルフェ>のテーマ、<太陽がいっぱい><男と女><慕情><禁じられた遊び><三文オペラ><夜の訪問者>・・・、鼻歌に口笛にとめどない。とめどない。 ジョン=ウェインが若かった頃の西部劇、それからマカロニウエスタンのテーマ、<戦場に掛ける橋>や<史上最大の作戦>の主題歌、007の挿入歌だった<ロシアより愛をこめて>や<ゴールドフィンガー>。映画を超えるほど美しいメロディーを作るフランシス=レイや、スペクタクル巨編に更なる力強さを加えるモーリス=ジャール。<小さな恋のメロディー>のビージーズや、<卒業>の

メタボ?

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大晦日を挟むように暮から正月に結構な積雪がありましたが、工房周辺の南区では相変わらず少雪が続いています。石狩湾から上陸する西の風が大量の雪を落とす石狩北部や南空知では、毎日の除雪に手を焼いているとのニュースですが、こういう気圧配置の時には工房近辺は屏風の陰に入ったように快晴の上空が拡がります。 晴れた日の朝は冷え込むのが定番ですが、ググッギュギュッと薄い雪を踏みつけながら艇庫の壁の寒暖計を見ると、ちょうど氷点下15℃でした。まあ、旭川市の江丹別ではマイナス30℃以下だそうですから、それと較べたらどうってことはありませんけどね。12月の初め頃から1ヶ月近く姿が見えずに心配していたルルが、狸のようにコロコロに肥って戻って来ました。いえ、戻ったというのは間違いです。時々は周辺で足跡を見かけていたのですから、たまたまタイミングが合わなかったということなのでしょう。しかし、気に掛かりはじめるといろんな疑問が湧いてくるもので、足跡で個体識別ができる訳もなく、「やっぱりどこかで死んだ・・」とまで自分で思い込もうとしたりしたもんです。見えない間に何があったのか、以前のように2頭連れ立ってではなく、ル

腕相撲

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退院してからもずっと通っていたリハビリから卒業することになった。手術した右腕はほぼ不自由なく動かせるようになり、はじめの頃は受ける度に目覚ましい成果だったリハビリも、最近ではその回復曲線が緩やかになったことから、今後は日常生活の中で気長に回復を目指すことにした。 いや、本当のところは3ヶ月を過ぎて保険診療が効かなくなると聞いて、じゃあもういいかという気持ちになったからなのだが、医者からもリハビリを止めても良いとお墨付きをもらって納得の卒業と相成った。 手術を担当してくれたO先生は、年間に百例以上の腱板断裂の回復手術をこなす、北海道では実績ナンバーワンの肩の専門医らしい。手術前の周到な説明の後、肩の周囲に6カ所の小さな穴を開け、内視鏡を駆使してチタンのボルトとワイヤーで切れた腱を繋いでくれた。事実、はじめにレクチャーを受けた通りに回復したし、自信の眼差しでの細かい対応は患者に不安を抱かせない、確かなプロの仕事を見せてもらった。それはそれとして、退院後のこの数ヶ月思い知らされていることがある。病気やケガが<治る>ということは、<もとに戻る>ということと同意語では決してない。晴れて退院とは言

正月雑感

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生まれて初めて(たぶん)無抵抗のまま正月を受け入れ、何もすることなくただダラダラと三が日を過ごしてしまった。1冊の本を読むでもなく、見たはずのTV番組も思い出せず、気付けばカラの一升瓶が2本と少し増えた体重。年末まで少雪だった工房周辺も、正月を挟んで続いた降雪で、それらしい冬景色にはなって来た。 この白い光を浴びながら、今年が少しは良い方向へむかう事を人並に想ってみたりする。何かに挑戦でもするかのように、歳の瀬も迫ってから安倍首相が靖国を参拝した。分祀問題を無視し、政治家など公人の宗教活動を諌める憲法20条に反しても、個人的に意味のある行為だったのだろう。「誤解はていねいに説明したい」と言うが、何がどのように誤解なのか一切の説明は無い。態度を硬化させる中韓に対しても、「ドアは開いている」という。鍵こそ掛けてはいなくても、秘密保護法案や軍備増強、武器禁輸の見直しや愛国心教育などで堅い扉を閉めたのは我が方ではないか。 しばらくは国政選挙もなく安倍政権の絶対権力は続く、言い換えれば去年1年の間に強引に数々の法案を通したように、自然エネルギー、革新的技術、非戦、社会保障など、この国が世界から