素材とメンテナンス

FRPという素材

FRPとは<Fiberglass Reinforced Plastics>の頭文字を並べた略語で、強化プラスチックとも言われるように、ガラス繊維やケブラー繊維、カーボン繊維などを基材とし、ポリエステルなどのプラスチック樹脂で固めたものの総称として一般に使われます。
通常は、布状のガラス繊維とポリエステル樹脂の組み合わせが用いられますが、軽量化や、より高強度が求められる場合には、ガラス繊維に替えてケブラーやカーボンなどの新素材が使われます。

また、一般的に製品の表面は、対紫外線や高硬度、平滑さなどを目的としたゲルコート樹脂によって覆われています。
このゲルコート樹脂は顔料によって着色されたプラスチックで、後から塗料で着色するものではないことを理解しておいてください。

【特性】

FRP艇は、その工法からポリエチレンのような大量生産はできませんが、一艇づつ手作りで生産されるために、積層方法の変更や部分補強、またカラーリングの指定なども容易にできます。 材質の特性として破損した場合の修理が可能であることもあげられます。
極端な例では、大破したり、一部が大きく欠損した場合でも、メーカーであれば直すことが可能です。


使用上の注意

【カートップ、出艇】

カートップなどでの運搬の際、艇体にかかる風圧は相当な力になります。万一走行中に落下すると大事故にもなりかねません。タイダウンベルトやロープで確実に固定しましょう。
ただし、意外に多いトラブルの原因は、強く締めすぎることによるハルの変形や破損です。キャリアパッドやカヤックアタッチメントを使用して、局所的な圧力を分散させることが肝心です。

使用前には、艇体に割れなどがないことを確認するのは勿論ですが、ラダーやペダルの動作は正常であるか、ショックコードなどのフィッティングに弛みはないか、しっかり点検しましょう。
出艇前にラダーブレードのストッパーをはずし忘れると、単独の場合には上陸を迫られることになります。

【使用後】

使用後には、海水や砂、海藻などを真水でよく洗い流しましょう。
この洗浄を怠ると、可動部や金属パーツの動作不良や腐食の原因になりますし、愛車が塩害で悩まされることにもなります。

また、ネオプレーン製のソフトカバーやスプレースカートも、真水で洗った後よく乾燥させておくことが、劣化の進行を遅らせることになります。

【保管】

保管には、専用の艇庫や車庫など、風通しの良い直射日光を遮る場所が適していますが、やむを得ないばあいにも、できるだけ乾燥した場所を選んでください。
キズがついたり、使い込まれてゲルコート層が磨り減った艇は、ガラス繊維が表面に出ている場合があり、水分が毛細管現象によって滲み込んでいます。

特に寒冷地では、冬季間に凍結して膨張し、層間剥離現象も引き起こしかねません。
また、多雪地での軒下保管は、1トン近い雪の重さで艇体を大破させることがあります。


自分でできる補修

【小さなキズ】

先に述べたように、ゲルコートは単に着色のための塗料ではありません。できるだけ岩や砂利の上を引きずる行為は慎みたいものですが、それでも必ずキズは付きます。擦り傷などがついても、それがゲルコート層内で止まっている場合にはさほど気に掛けることはありませんが、ガラス繊維を含んだ樹脂層にまで及んでいるようなら、よく洗浄・乾燥した後、ゲルコート樹脂の代わりに小筆でニスや塗料を塗っておきましょう。

パドルや積荷によって生じたデッキのわずかなすりキズや、経年劣化によるゲルコートのくすみが気になるようなら、コンパウンドとWAXをかけることで色と光沢がよみがえります。

【自分で修理できる破損】

破断したり穴が開いたような場合には、水分と塩分を充分取り除いたあと、周辺をよくサンディングして、ガラス繊維と樹脂で補修します。
FRPの補修キットは大きいDIY店やカヌーショップで入手できますが、取り扱い説明書をよく読んで、樹脂と触媒の分量を正しく使用するように心掛けましょう。

【大きな破損】

自分で修理することが不可能な大きな断裂や欠損の場合は、メーカーに送って修理することになりますが、修理費のほかに送料がかかります。また、電話やメールで破損箇所を伝えても、実艇を見ないと正確な見積もりが得られないのもご理解願います。

高強度のケブラー繊維を使用したハルの場合、衝撃を受けても破断に至ることは少ないのですが、水の浸入を防ぐ為のダックテープなどは、応急修理のためにも携行したいものです。

全ての故障と修理に触れる事は不可能ですので、ご不明な問題やお気付きの点は電話かメールにてお問い合わせください。