年別アーカイブ: 2017

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雪虫の舞うころには

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色づいた木の葉はわずかな風で落ち始め、柔らかい斜光に雪虫舞う季節になりました。毎年のことですが、この時期にはありとあらゆる虫たちが越冬の準備に入ります。 木々の根元に潜るもの、樹皮の隙間に潜むもの、卵に次代を託して死に果てるものと、それぞれにさまざまな越冬のかたちがありますが、里山に近い家々で話題になるのがカメムシでしょう。大量に発生すればするほど、その匂いで厄介者にされるカメムシですが、カメムシはカメムシでも、関心を持ってよく見ると不思議なことに毎年その種類が変わります。 今年の主役カメ君は写真のチャイロクチブトカメムシで、これといって特徴のない地味なやつばかりが越冬客の大半です。 小ぶりで黒っぽいスコットカメムシだったり、緑色のエゾアオカメムシだったりと、その年によって違うのはなぜなのか。それはその夏の昆虫社会を振り返ってみれば、なるほど結果論として納得がいくのです。 カメムシ目の仲間は非常に多く、セミやヨコバイ、アメンボやミズカマキリなどもその仲間に入りますが、その強烈な匂いで身を守る(これは決して攻撃ではなく、鳥についばまれて自身が死ぬことになっても、二度と仲間に繰り返されない

共に生きるもの

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今朝がた工房に来る道端で、輪禍死したと思われるタヌキの死骸にカラス達が群がり、興奮状態で毛皮や肉を引きちぎっているところに出くわしました。 ときどき見かけていた、3頭の子ダヌキのうちの1頭かもしれません。 このところこの近辺では、タヌキにとって勝ち目のない天敵だったアライグマが駆逐され、一時は全く見かけなかったエゾタヌキの棲息が復活し、数年前から毎年のように3〜5頭の子を連れたタヌキを認めていたところです。かわいそうですが、人間社会の近くで生きる野生動物にとって、とくに動きのあまり俊敏ではないタヌキには、道路上でのアクシデントは避けられない受難のようです。 天敵も狩猟圧もないタヌキにとって、最大の敵はクルマと犬になりました。何度か危ない目怖い目に遭いながら、それをすり抜け身を交わして命を繋いでいきます。先月はヒグマの親子に遭いましたし、3日前の帰りがけにもオスのエゾシカと危うく接触するところでした。そのほかにもキタキツネの親子やエゾリスなど、放置された里山の自然が回復するにつれ、それに比例して身近なところで野生が復活していきます。復活といえば、北米でバイソンに出会えました。 写真はカナ

ほんとはチョッと・・

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2週間ほどのカナダ・アメリカの旅を終えて帰ってきました。時差のせいで、頭の奥に倦怠感がボーっと残っています。 カナディアンロッキーでは3日ほど雪の日もありましたが、40年の時間を全く無視してくれる美しい森や湖や岩肌の氷河、気が遠くなるような大平原、大切にされている旧い街並みやパワフルに発展する都市のダイナミズムに触れて、ひとつひとつがまた良い想い出になりそうです。それはそれとして、前回のこの欄を見てくれた何人かのひとから、ありがたいことに「あれはどうなった?逢えたの?」と訊かれます。40年前にわれわれ若い夫婦がたいへんお世話になった、当時カルガリー在住のJoeファミリーの消息は判ったのかと・・。結論から云うとNOでした。 ここ数十年で劇的に発達した情報社会に、もしかしたらと期待を込めて、いちおう毎日メールをチェックできる環境を確保してはいました。反応がまったく無かった訳ではありません。1件はバンクーバー到着時に受信した、何かの宗教への勧誘を示唆するようなメール、もう1件はバンフ滞在中に受けたメールで、<必ず探し出してみせます>という商売人からのものでした。もちろん両方とも丁重にお断りし

<死ぬまでにやっておきたい10の事柄>

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リビングウィルについて書かれた本にそんなタイトルの一文があった。自分が過ごしてきた人生のまとめを考え、やり残した気掛かりなことや、ずっと願い続けていることなどを思いきって実現させることは、満足して死を迎えるうえでとても大切だ。しかもまだ健康でからだも動くうちにでなければならないし、死を目の前にしてからでは全てが遅い。もしかしたらアクシデントが無いとも限らないのだから・・。たしかそんな内容の提言だったと思う。だからという訳ではないし、10項目を考えてみたことも無いのだが、いま自分がやろうとしていることはその一つと言えなくもない気がしている。40年前に世話になった人を探して会ってみたいと思い立った。 当時、カナダ・アルバータ州・カルガリーに在住だった、Joe Tsukishimaがその人だ。 初めて逢ったのはお互いに旅行中だったバンクーバーのモーテルでのこと。ノックにこたえてドアを開けたところにいたのがジョー・ファミリーだった。自身が日系3世のJoeはフロントで日本からクルマを持ってきたカップルが泊まっていると聞き、親近感を持ったのかもしれない。みんなでプールで遊びながら、なにか困ったこと

祈る

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数日前の夕刻、戸締まりを済ませ、クルマに乗って道路に出たすぐのところにそいつらは居たんです。高いところで木の枝葉がかぶさって少し早めに薄暗さに覆われた道路の上、黒いかたまりが2つ動き回っているのが見えました。じゃれあうような動きに、それが子グマだとすぐに判りましたが、3〜4M手前に停車したのに遊ぶのを止めようとしません。 一瞬おいた後、2頭は同時に立ち上がり、こちらを凝視したままフリーズ。 見た感じの体重は20キロ台。30キロまではいっていないと思われますが、今年生まれて順調に育っている様子が見て取れます。数秒後、道路右手のノリ面の下から、ヤブを踏みしだいて母熊が現れ、子グマ達をうながしてトロットで前に進み始めました。こけつまろびつといった感じで一生懸命クルマの前を走る子グマの可愛いこと。適度な距離を保ってその後ろをゆっくり走る母グマはといえば、四肢や肩の筋肉の動きに合わせてしなやかに長い毛を波打たせ、振り返ることもありません。 「この子たちはわたしが守る」という誇りと自信に満ちた様子が、余計にその体格を大きく見せているようです。 そうはいっても目測200キロを少し下回る程度の、メスの